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 3月30日に消費税引き上げ法案が閣議決定され、国会に提出された。直前まで行われた民主党内の議論では、景気が悪化した時に税率アップを停止できる景気弾力条項に具体的な数値を入れるかどうかで紛糾したが、結局、数値を入れないことで執行部が押し切った。

 確かに、デフレが続くなかで、消費税率の引き上げに踏み切ったら、日本経済が恐慌に突入してしまう可能性がきわめて高い。だから、具体的数値を盛り込むべきだという民主党内の反消費税派の意見は、分からないわけではない。しかし、そもそもタイミング以前に消費税引き上げ自体が大きな問題を抱えているのだ。

 今回の消費税率引き上げは、社会保障と税の一体改革の一環であるとされている。少子・高齢化にともなって社会保障費が増えていくから、消費税を引き上げないといけないというのが政府の説明であり、国民の多くもそう理解している。しかし、社会保障を消費税でまかなうことの意味をきちんと考えないといけない。

 まず、現行の社会保障制度がどのような財源で運営されているのかを考えてみよう。

 社会保障費用のなかで大きなウエイトを占める医療・介護と年金には、税金も注ぎ込まれているが、大部分が加入者の支払う保険料でまかなわれている。そして、厚生年金にしろ、健康保険にしろ、その保険料は収入に比例して徴収されている。例えば、厚生年金の保険料率は16.412%で、給与や賞与に同じ率でかかっている。

 この保険料は労使折半で、労働者と企業は、保険料を8.206%ずつ支払っている。これを消費税でまかなうとすれば、企業負担は一気にゼロになる。消費税は消費者(労働者)が支払うものだからだ。

 もうひとつの問題は、逆進性の問題だ。大雑把に言うと、低所得者は収入の8割を消費している。その消費に5%の消費税がかかるから、消費税の負担は収入の4%ということになる。一方、高所得者は収入の5割しか消費しない。その消費に5%の消費税がかかるから、消費税の負担は収入の2.5%になる。つまり、収入に対する消費税の負担は、低所得者の方が圧倒的に大きいのだ。そのため、もし社会保障費用の増加分を消費税でまかなうようにすると、保険料で財源をまかなっている現状よりも、低所得者に集中的に負担がかかることになる。

 つまり、増大する社会保障費を消費税でまかなうことの本質は、 ・・・ログインして読む
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筆者

森永卓郎

森永卓郎(もりなが・たくろう) 経済アナリスト、獨協大学経済学部教授

1957年7月生まれ。東京都出身。東京大学経済学部経済学科卒業。日本専売公社、日本経済研究センター(出向)、経済企画庁総合計画局(出向)、三井情報開発(株)総合研究所、(株)UFJ総合研究所を経て、現在、経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学と計量経済学。そのほかに、金融、恋愛、オタク系グッズなど、多くの分野で論評を展開している。日本人のラテン化が年来の主張。

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