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マイク・ウォーレスと「60ミニッツ」

茂木崇

茂木崇 ニューヨーク・メディア文化研究者

 CBSテレビの報道番組「60ミニッツ」の初代特派員であるマイク・ウォーレスが4月7日に亡くなった。享年93歳。

 「60ミニッツ」の放送が開始されたのは1968年。アメリカのテレビ史上、最も多くの視聴率を稼いだのはこの番組であり、今でも週間視聴率トップ10に顔を出す。

 「報道番組はカネにならない」という常識を打ち破り、テレビ独自の報道のあり方を追求してきた「60ミニッツ」。伝説の記者の死に接し、改めてこの番組の意義を振り返ってみたい。

 「60ミニッツ」は日曜夜7時から1時間の放送。ベテラン記者によるレポートを毎週3本放送する。1本目は政治経済の硬派な話題が多く、3本目はアート・エンタテイメントの話題を取り上げることが多い。番組のテーマ曲はなく、オープニングやCM前にはストップウォッチが大写しになり、カチカチと時を刻む。

 番組を企画したのは、初代エグゼキュティブ・プロデューサーとして辣腕をふるうことになるドン・ヒューイット。彼は「ライフ」のような週刊誌のテレビ版を作ろうとした。より具体的には、人間味あふれる記者が世界を飛び回り、人物に焦点をあてて面白いストーリーを語る番組を作ろうとした。

 気難しい顔をして細々と事実関係を並べても、テレビの前の視聴者は食いついてくれない。視聴者が記者に感情移入し、記者の冒険に自分も同行しているかのような臨場感を感じる番組にしたい。

 そこで選んだのが、物静かで柔和なキャラクターのハリー・リーズナーと、きつい質問をたたみかけて本音を引き出すマイク・ウォーレス。この2人を初代特派員として「60ミニッツ」はスタートした。

 だが、番組が視聴者に浸透するのには時間がかかり、なかなか人気は出なかった。それでも、CBSも「60ミニッツ」のチームもこれに耐えた。辛抱強い番組作りが実り、「60ミニッツ」の年間平均視聴率がはじめてトップ10に入るのは、番組開始から9年後の1977~1978年のシーズンである。以後、連続23シーズンにわたって年間平均視聴率トップ10入りという記録を打ちたてた。現在は週間視聴率トップ10に入ったり入らなかったりという状況である。

 「60ミニッツ」が長きに渡って成功している理由は、ジャーナリズムとエンタテインメントのバランスをうまく取り、

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筆者

茂木崇

茂木崇(もぎ・たかし) ニューヨーク・メディア文化研究者

東京工芸大学専任講師。1970年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専門はマス・コミュニケーション論、アーツ・マネジメント論で、守備範囲はニューヨークの新聞、雑誌、出版、テレビ、デジタルメディア、広告、音楽、ブロードウェイ。共著に『コミュニケーションの政治学』(慶應義塾大学出版会)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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