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 日銀が中長期的な物価安定の目処の公表に踏み切った。アメリカ経済はリーマン・ショック後の深刻な景気後退リスクを量的緩和政策で切り抜けた。さらに昨秋来、雇用情勢が回復に向かう一方、住宅市場が上向くなど景気回復期待が拡がる。金融政策はデフレ脱却の要との見方が一段と強まった。

 日米を対比してみると、緩和政策を奏功させた主な要因として次の3つが指摘されよう。

 まず第1にアメリカの破産制度だ。連邦破産法第7章、いわゆるチャプター7である。チャプター13はリスケやヘアカットがあるにせよ、債務返済を前提にする。

 それに対して、チャプター7では税金や罰金などを除き債務者の返済義務が免除される。サブプライムをはじめ過剰債務問題が急速に解消に向かった所以だ。ちなみに2007年以降、アメリカの個人破産件数が急増するなか、チャプター7の破産件数は09年から昨年まで3年連続して7割を占める。

 第2は物価動向だ。わが国では消費者物価の下落が1999年から今日までほぼ13年にわたって続く。金利は歴史的低水準だが、金利はゼロ以下には下がらず、実質金利は高止まりだ。デフレ下では返済負担が年を追って水膨れするため、借入意欲は冷え切ったままだ。

 それに対してアメリカの消費者物価は09年前半に下落に転じたものの、同年秋以降、上昇に転じデフレを脱した。昨春来の上昇率は前年比3%前後だ。金利は量的緩和で歴史的低水準に下がり、返済負担は軽い。消費者金融残高はリーマン・ショック後減少したが、10年半ば以降、増勢を回復した。

 もっともGDPギャップは日本よりアメリカが大きい。内閣府によればわが国は4%弱で、米センサス局によればアメリカは7%弱だ。本来、需給ギャップが大きい国ほど大きなデフレ圧力に晒される。

 しかし現実は逆だ。理由は経済構造の違いにある。わが国はモノづくり経済だ。そのため新興国発の価格破壊に直撃される。しかしアメリカはサービス経済だ。そのため、価格破壊は実質所得の増加を通じて消費を浮揚し、経済にはプラスに作用する。わが国と正反対だ。製造業の生産性は設備ストックに左右されるが、医療や教育をはじめサービスセクターは労働集約的で、設備ストックが過剰でも直ちに深刻な問題は生じない。

 加えて人口動態がある。人口増で経済が成長すれば必要な貨幣量も増える。しかし、人口減で経済が低迷すれば、その分、必要な貨幣量の増加は抑制される。毎年300万人規模で人口が増えるアメリカと同列には論じられない。

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筆者

藤井英彦

藤井英彦(ふじい・ひでひこ) 株式会社日本総合研究所 調査部長/チーフエコノミスト

【退任】(株)日本総合研究所 理事/チーフエコノミスト。83年東京大学法学部卒業。同年住友銀行入行。90年より(株)日本総合研究所、11年から現職。共著に「オバマのアメリカ 次なる世界経済の行方」(東洋経済新報社)、「2006 図解 日本総研大予測」(徳間書店)、「図解 金融を読む辞典」(東洋経済新報社)。

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