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世界経済の最大のリスクはユーロ圏にある

吉松崇 経済金融アナリスト

 4月6日(金)に、市場予想よりも弱いアメリカの3月の雇用統計が発表されると、株式市場が大きく動揺した。10日(火)のニューヨーク市場で、ダウ平均株価は213ドル安と、今年最大の下げとなり、終値は12,716ドル、4月2日の高値、13,264ドルから4%を超える下落となった。4月に入り、欧州で債務危機が再燃する兆しがある。同じ10日の欧州市場では、スペイン国債の利回りが6%近くにまで上昇した。また、日本でも、11日(水)の午前中に日経平均は9,500円を割りこんだ。こちらも3月27日の年初来高値、10,255円から7%を超える下落である。

 現在、金融市場は、ほんの僅かでも弱い経済指標に敏感である。特にアメリカでは、景気の本格的な回復が期待されながら、夏場以降のユーロ圏の混乱で水を差された昨年の記憶がよみがえる。3月の雇用統計、特に非農業部門の雇用者数の増加は、20万人増という市場予想の平均に対し、12万人の増加と確かに弱い。しかし、それ以上に市場にネガティブな影響を及ぼしたのは、ギリシャの債務再編で落ち着いたと思われた欧州の国債市場が、ひと月も経たないうちにまたもや混乱することのショックではないだろうか。

■リスクをコントロールするFRB(連邦準備理事会)

 この市場の混乱を、取り敢えず落ち着かせたのはFRB(連邦準備理事会)である。FRBのジャネット・イェレン副議長は、11日(水)、ニューヨーク大学での講演で、

(1)6日(金)の雇用統計が弱いといっても、3カ月平均をみれば、2011年10~12月の平均15万人の雇用増に対し、2012年1~3月は平均21万人増である。また失業率も少しずつ改善している。つまり、景気は回復基調にある。

(2)足下のガソリン価格の上昇にもかかわらず、インフレ率はFRBの目標値である2%、或いはそれを下回って推移すると考えられる。

(3)実体経済の回復基調が続いても、70%の確率で、2014年末まではFRBがターゲットとする失業率(5.2~6%)にまでは改善しない。

この3点を強調して見せた。

 要するに、「景気は回復しているが、インフレは心配なく、FRBは2014年一杯、現在の緩和スタンスを継続する」ということである。

 この講演は、明らかに効き目があったようだ。 株式市場は12日には落ち着きを取り戻し、13日(金)の週末には、ダウ平均は13,000ドル近くまで上昇した。ニューヨーク・タイムズのアッぺルバウム記者は、このイェレン副議長の講演を高く評価する。「景気回復が予想以上に加速したとしても、2014年一杯、金融政策スタンスに変更はない、と言い切ったことは、特筆に値する。言い換えれば、市場に『落ち着け!!』と言うに等しい。」 (“Parsing a Fed Official Speech” by Binyamin Appelbaum, New York Times, April 12, 2012)

http://economix.blogs.nytimes.com/2012/04/12/parsing-a-fed-officials-speech/

 更に、13日(金)、ニューヨーク連銀のウィリアム・ダドリー総裁は、バッファローでの講演で、

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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『労働者の味方をやめた世界の左派政党』 (PHP新書、2019年)、『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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