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日本の自動車産業の「危機論」を疑う

安井孝之

 日本の自動車産業も家電産業が歩みつつある衰退への道を歩んでいるのではないかという危機論が台頭している。曰く「ハイブリッドは日本だけの技術。ガラパゴスになってしまう」「世界は電気自動車に照準を当てて動いている。乗り遅れてしまう」「フォルクスワーゲンや現代の伸びはすごい。数量での一気に突き放される」――。

 いずれも半分正しく、半分間違っている言説だと思う。なぜならば、自動車産業の特殊性を見据えた見方ではないからだ。

 日本の70年代以降の経済成長を支えたのは自動車産業と家電などの電機産業の輸出である。双方とも組み立て産業であり、製造業の苦境は等しくのしかかると見られがちだ。だが、この二つの産業には大きな違いがある。

 ものづくりの実証研究の権威である東京大学の藤本隆宏教授によると、製造業にはパソコンや薄型テレビに代表されるようにディスプレーやCPUなど主要部品を組み立てれば製品が出来上がる「モジュラー型産業」と、何万点もの部品を最適の方法で組み合せ、乗り心地の良いクルマをつくるような「摺り合わせ(インテグラル)型産業」の二つがある。最近のデジタル家電はモジュラー型の代表格、自動車は摺り合わせ型の代表格である。

 デザインなど斬新な商品コンセプトを考え、そのための主要部品を世界中から集めて、もっとも組み立てコストが安い地域で組み立て、輸出するというモジュラー型モデルでは結果的に日本は弱く、家電産業の総崩れにつながった。それに比べて、

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