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大飯再稼働 垣間見える「原子力複合体」の蠢動

小森敦司 朝日新聞経済部記者(エネルギー・環境担当)

 「節電努力を呼びかけるだけでは不十分。原子力発電所の再稼働の必要性は、昨年夏に比べても一層高まっている」

 日本原子力産業協会が4月18、19日に東京で開いた年次大会。今井敬会長(新日鉄名誉会長、元経団連会長)はその所信表明で、原発再稼働必要論をぶった。

 同協会は、電力会社や原子力関連企業をたばねる団体で1956年に発足(当時の名は日本原子力産業会議)。これまで日本の原子力の推進役を担ってきた。今大会の国内参加者名簿にも、電力会社や原子炉メーカーの経営陣、国会議員、立地自治体幹部ら300人超のそうそうたる名前が並んでいる。

 昨年の年次大会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて中止されたが、今年、2年ぶりに開かれた。今井敬会長は所信表明でこうも語っている。

 「原子力発電は引き続き一定の役割を担っていく重要なエネルギー源」

 「新たに原子力発電の導入を計画している国からは我が国が有する技術力に、強い期待が寄せられている」

 まるでニッポン原子力村の再始動宣言だ。

 一方、福島の原発事故で避難生活を強いられている16万人以上の人々に向けては、「原子力の平和利用を推進してきた立場のものとして、心からおわび申し上げる」などと簡単に触れただけだった。「おわび」を口にするなら、法的に免じられている原子炉メーカーらの賠償責任を追及してもらいたい。

 国の新しいエネルギー基本計画をつくる総合エネルギー調査会の基本問題委員会(委員長は三村明夫・新日鉄会長)では、いま、事務方の経産省資源エネルギー庁が2030年の「エネルギーミックスの選択肢」をまとめようと必死だ。

 引っ張るのは、同庁の今井尚哉次長だ。原産協会の今井敬会長のおいにあたる。人的な関係が政策づくりを左右することはないと信じる。

 だが、エネ庁がつくった整理案は、原発の割合を「35%」「25%」「20%」「ゼロ」にするといった数字ありきの区分で、脱原発に向けた社会像や政策の方向性が抜け落ちていた。

 とりわけ、新規建設をせずに稼働後40年で廃炉にすると原発の割合が15%以下になる(事故前は3割弱)との指摘があるのに、「20%」以上の案がいくつも用意されていることに、複数委員から強い批判が出ている。偏っているのは明らかだ。

 原子力政策をめぐっては、原産協会の今井敬会長が座長を務める「エネルギー・原子力政策懇談会」という財界人や大学教授らでつくる会議体も動いた。同会有志が3月16日、野田佳彦首相に、原子力発電所を早く再稼働するべきだ、といった提言を出したのだ。

 懇談会のウェッブサイトによると、座長代理は原子力安全・保安院次長や資源エネルギー庁長官を経て、経産省事務次官にのぼり詰めた望月晴文氏だ。1990年代後半の橋本改革の省庁再編で、保安院を経産省の下に取ることに「成功」した人物だ。

 その再編こそが、おざなりの安全審査につながった、と事故後に批判にさらされるのだが、当の望月氏は6月に原子炉メーカーの顔も持つ日立製作所の社外取締役に就くという。なんということだ。

 懇談会の4月3日の会合には、 ・・・ログインして読む
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筆者

小森敦司

小森敦司(こもり・あつし) 朝日新聞経済部記者(エネルギー・環境担当)

東京都出身。1987年入社。千葉、静岡両支局を経て、名古屋や東京の経済部に勤務、金融や経済産業省を担当。ロンドン特派員も経験し、社内シンクタンク「アジアネットワーク」では地域のエネルギー協力策を研究。現在、エネルギー・環境分野を担当、とくに原発関連の執筆に力を入れている。著書に「資源争奪戦を超えて」「日本はなぜ脱原発できないのか」、共著に「失われた〈20年〉」、「エコ・ウオーズ~低炭素社会への挑戦」。

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