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 日銀が4月27日の金融政策決定会合で追加の金融緩和を決めると同時に「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、デフレ脱却の展望を示した。

 しかしながら、これでは不十分だとの受け止めが市場に広がり、この日は円高・株安という結果を呼んでしまった。このことは日銀の政策が市場の期待をはずすことで後手に回り、日銀が旧来から維持したいと考えてきた「機動的な金融政策運営」に成功していないことを示しているといえよう。

 日銀は、2月の決定会合でせっかく「当面の物価安定の目途」として消費者物価上昇率「前年比1%」を掲げて市場関係者に歓迎されたが、その後はむしろ手抜きぶりが指摘されるなど、日銀の「本気度」が疑われてきた。それもそのはず、金融緩和と物価目標の設定は、日銀がいいやいやながら、あるいは本来の理念に反して渋々と、打ち出した策であったし、そのことを日銀が素直に認めてしまっている。

 日銀に同情的な人びとは、「金融緩和は政治の圧力に屈することで、すなわち悪」という旧来のパターン認識を克服できないでいる。いわば共同幻想としての「日銀イコールインフレ退治のチャンピオン」という強烈な使命感が、デフレ突入を防げなかったばかりか、デフレ脱却策を中途半端で疑わしいもの(市場からみれば)にしてしまっているという認識は希薄だ。

 だが、日銀がデフレ脱却の主役となるには、思い切って物価目標を「2%」にして掲げ直すのがよいだろう。それができなければ、「1%代後半の水準が定着したことを見極めるまで、金融緩和を続ける」ことを明らかにし、断固としてその路線を貫くことだ。

 もともと「消費者物価指数」は実態よりも1%程度高く出るという統計上のくせ(上方バイアス)がある。だから、消費者物価が前年比1%程度の上昇が見込めるようになったとしても、その時点(つまり、GDPデフレーターはまだマイナスで、デフレが続いているかもしれない状態)で、金融緩和をやめてしまってはいけないのである。

 逆に言えば、いまの日銀は、「デフレ脱却が近づいてきたら、緩和にブレーキをかけようかと思っています」と言っているようなものだ。これでは ・・・ログインして読む
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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

上智大学教授。群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。富山、奈良、大阪、ニューヨーク、静岡、東京で記者をしてきた。近年は日本の経済政策や世界金融危機など取材。2009年5月から東京本社論説委員室勤務、11年4月からは編集委員も務め、14年4月から現職。著書に「財政構造改革」「消費税をどうするか」(いずれも岩波新書)、「デフレ論争のABC」(岩波ブックレット)。

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