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日銀は大胆な金融緩和に踏み切らざるを得ない?

吉松崇 経済金融アナリスト

 日銀は4月27日、『経済物価情勢の展望』(いわゆる『展望レポート』)を発表するとともに、資産買い入れ基金の5兆円増額を軸とする一段の金融緩和を発表した。今回の追加金融緩和は、この決定に先立って、一部のメディアに事前にリークされていたものとほぼ同じ内容なので、市場は既に織り込み済みだと思われる。 2月14日の「事実上のインフレ目標導入」のようなサプライズはないので、目先、為替が大きく動くこともないだろう。

 また、5兆円の基金の増額といっても、2012年12月末までの基金の規模は、従来通り65兆円であり、これを2013年6月までに70兆円に増やすという話である。購入する国債の残存期間を、従来2年までとしていたものを、3年にまで伸ばすので、イールド・カーブ効果が若干認められようが、それほど大きな話ではない。

 これらを勘案すると、短期的には、今回の金融緩和のインパクトは大きくないだろう。

予想以上に明るい『展望レポート』

 それでも私は、今回の決定は、今後の金融政策を占う上では、重要なものになるのではないかと考える。というのは、同時に発表された『展望レポート』の中味が、随分と明るい見通しになっているように思えるからだ。

 例えば、政策委員の大勢見通しとして提示されている実質GDP成長率(対前年比)の中央値は、2012年度、+2.3%、2013年度、+1.7%と、1月時点の見通しから、2012年度で0.3%、2013年度で0.1%上方修正されている。また、物価見通しも同様で、消費者物価指数(除く、生鮮食品)の対前年比上昇率は、2012年度、0.3%、2013年度、0.7%と、1月時点の見通しから各々0.2%上方修正されている。

 常識的に考えれば、経済・物価情勢の見通しが3ヶ月前に比べて明るくなっているときに、追加の金融緩和を行う理由は何なのか、との疑問が湧く。事実、27日の金融緩和発表後の記者会見でも、この疑問が記者から投げかけられ、白川総裁は、「確かに、上振れているときに、緩和を強化することはあまり例がないが、私どもとしては、日本経済の長年の課題であった物価安定のもとでの持続的成長経路に明るい動きが見え始めたこのタイミングで、このモメンタムを大事に育てたい」と答えている。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1204d.pdf

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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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