2012年05月02日
テレビ事業の不振でシャープ、ソニー、パナソニックが大赤字を出し、日本の「テレビ敗戦」が鮮明になった。日本の電子産業の生産額41兆円(2011年)のうちテレビ関連は6兆円を占めるので、すそ野への影響は大きい。
シャープは3月、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業を筆頭株主(10%)として受け入れ経営危機をしのいだ。パナソニックは中国の家電大手ハイアールに白物(三洋電機分)を売却し、ソニーはホンハイに海外のテレビ工場を売った。NECも中国レノボとパソコン生産の合弁会社を設立した。
中国・台湾マネーに救済されるこの現象をどう考えればよいのだろう。自動車と並ぶ主要産業のあまりの不振を嘆きたくなるが、この際、中国・台湾マネーを「福の神」として生かす道を考えてはどうだろうか。今のままでは事業も技術者も離散して衰退するしかないことを思えば、外国資本によって技術や人材が再び生かされ、生産や雇用が維持されるのは喜ばしいことだ。
ホンハイは、アップルなどの電子製品の生産受託(EMS)専門の企業で、中国本土に90万人の社員を抱え、年間売り上げは10兆円に近い巨大企業だ。将来、アップルがテレビ事業(アップルテレビ)に乗り出す時は、ホンハイは堺工場でパネルを生産する可能性があるという。シャープにとっては、ホンハイや背後にいるアップルの経営ノウハウを学び取る良いチャンスになる。
「敗戦」の原因は、6重苦だけではない。日本家電の高コスト体質・技術の方向性・経営手法などが、グローバル化の中で国際競争力を失ったことにある。デジタル時代の必然であるコモディティ(汎用品)化や水平分業、オープン・イノベーション(自社のロードマップを公開して参加企業を募る手法)の流れから目をそむけて、何でも自前でやりたがった。
これではコスト削減に限界がある。「いつか円安になれば」などと期待してはいけない。シャープの奥田隆司・新社長は会見で、自前主義の見直しをはっきり語っていた。日本企業は往々にして「敵は社内にあり」なので、改革は容易ではないだろうが、ホンハイの外圧をうまく使うなどして、ぜひ成果を出してほしい。
さて問題のテレビだが、
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