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デフレ脱却は最終ゴールではない

武田洋子 三菱総合研究所チーフエコノミスト

 4月27日に公表された日銀の展望レポートでは、消費者物価指数(除く生鮮食品ベース)でみた上昇率が2013年度に+0.7%となるとの見通しが示された。待望の「デフレ脱却」の兆しが視野に入ってきた。これは大変喜ばしいニュースである、と一体、どれほどの日本国民が感じているだろうか。

 確かに家電量販店を訪れてみればデフレの猛威は身に染みる。かつて、「1インチ1万円」と言われた液晶テレビだが、いまや60型が20万円以下で買えることもある。消費者にとっては悪いことではないが、日本の製造業にとっては深刻な逆風であり、「大企業の身売り」に象徴されるように、そこで働く従業員にとってもよいニュースではないだろう。

 テレビの値崩れが取りざたされる一方、ほぼ同時期に値段が1年で3倍になった品もある。キロ当たり80万円程度だったシラスウナギ(稚魚)の卸値は、今年に入って250万円まで高騰したという。うな重の値上げに踏み切った近所の鰻屋に心当たりがあるかも知れない。

 客観的な数字を見ておこう。総務省が公表した3月の消費者物価指数(総合指数)は前年同月比+0.5%、除く生鮮食品ベースでも同+0.2%上昇した。「デフレ脱却」がゼロインフレを意味しているのであれば、既に「脱却」には成功していることになる。逆にゼロインフレ以外の意味があるとするならば、今後、消費者物価指数が毎年1%なり2%なり、さらに上昇していくことが「デフレ脱却」を強く提唱する論者の真意ということになる。

 もう少し詳しく統計数字を掘り下げてみる。支出ウェイトの7%を占める光熱・水道価格をみると、

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