永井隆
2012年05月14日
人口増が見込めない国内市場への依存度が高いのに、企業数はやたら多い。伝統企業ばかりで、なかなか再編ができない――。
食品、流通、日用品などグローバル化が遅れた業界に共通する状況だが、ついにM&A(企業の合併・買収)の波がこれらの業界にも押し寄せてきた。そこで大きなポイントになるのは、会社のとりわけ人事制度は、M&Aでどうなるのか、ということだろう。
アサヒグループホールディングスは、10月1日付で味の素が所有するカルピスの全株式を約1200億円で取得していく。アサヒの泉谷直木社長は「少子高齢化が進むなか、各カテゴリーでナンバーワンかストロング2のブランドを持たなければ生き残れない。乳酸菌トップのカルピスブランドは魅力的」と話す。
清涼飲料市場は、2011年で約17億ケースの規模。少子高齢化から微減傾向が続いている。その一方、地域のサイダーメーカーなど中小を併せると、約200社が犇(ひし)めく。 今回は飲料業界では過去最大規模のM&A(企業の合併・買収)だが、カルピスを持ち株会社(アサヒグループホールディングス)の傘下に入れそのまま存続させて、アサヒ飲料と合併させないのは特徴だろう。
人事という観点から、M&A後の人事制度、賃金制度のあり方には、主に次の三通りがある。
(1)両社の制度を残す、(2)買収した会社の制度に合わせて人事統合する、(3)新しいシステムを作る。
アサヒは2002年に、当時のアサヒビールとして旭化成酒類部門と協和発酵酒類部門を買収した。このときには(2)で実行した。
これに対して今回は(1)を採用した(ちなみに、アサヒが純粋持ち株会社制に移行したのは昨年7月)。泉谷社長は「(カルピスは)90年もの歴史がある会社。独立性を尊重したい」などと話す。
(1)は、買収された会社の社員の立場からすると、事後もあまり変化はない。仕事の中身も賃金体系も変わらないためだが、社員に不安は少ないはず。伝統企業に勤めるプライドが高いサラリーマンにとっては、変化が小さいことは何よりの福音ではないか。融和型の手法であり、軋轢を回避できる。
その一方で、
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