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食品業界で始まったM&Aが意味するもの

永井隆

永井隆 ジャーナリスト

 人口増が見込めない国内市場への依存度が高いのに、企業数はやたら多い。伝統企業ばかりで、なかなか再編ができない――。

 食品、流通、日用品などグローバル化が遅れた業界に共通する状況だが、ついにM&A(企業の合併・買収)の波がこれらの業界にも押し寄せてきた。そこで大きなポイントになるのは、会社のとりわけ人事制度は、M&Aでどうなるのか、ということだろう。

拡大カルピスの買収についての記者会見後、握手をするアサヒグループホールディングスの泉谷直木社長(右)。左はカルピスの現在の親会社、味の素の伊藤雅俊社長=2012年5月8日、東京都内

 アサヒグループホールディングスは、10月1日付で味の素が所有するカルピスの全株式を約1200億円で取得していく。アサヒの泉谷直木社長は「少子高齢化が進むなか、各カテゴリーでナンバーワンかストロング2のブランドを持たなければ生き残れない。乳酸菌トップのカルピスブランドは魅力的」と話す。

 清涼飲料市場は、2011年で約17億ケースの規模。少子高齢化から微減傾向が続いている。その一方、地域のサイダーメーカーなど中小を併せると、約200社が犇(ひし)めく。 今回は飲料業界では過去最大規模のM&A(企業の合併・買収)だが、カルピスを持ち株会社(アサヒグループホールディングス)の傘下に入れそのまま存続させて、アサヒ飲料と合併させないのは特徴だろう。

 人事という観点から、M&A後の人事制度、賃金制度のあり方には、主に次の三通りがある。

 (1)両社の制度を残す、(2)買収した会社の制度に合わせて人事統合する、(3)新しいシステムを作る。

 アサヒは2002年に、当時のアサヒビールとして旭化成酒類部門と協和発酵酒類部門を買収した。このときには(2)で実行した。

 これに対して今回は(1)を採用した(ちなみに、アサヒが純粋持ち株会社制に移行したのは昨年7月)。泉谷社長は「(カルピスは)90年もの歴史がある会社。独立性を尊重したい」などと話す。

 (1)は、買収された会社の社員の立場からすると、事後もあまり変化はない。仕事の中身も賃金体系も変わらないためだが、社員に不安は少ないはず。伝統企業に勤めるプライドが高いサラリーマンにとっては、変化が小さいことは何よりの福音ではないか。融和型の手法であり、軋轢を回避できる。

 その一方で、 ・・・ログインして読む
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筆者

永井隆

永井隆(ながい・たかし) ジャーナリスト

ジャーナリスト。1958年生まれ、群馬県桐生市出身。明治大学卒。1992年、勤務先の新聞社が実質的に経営破たんし、新聞を休刊。これに伴い失業を経験。93年にフリーで独立。新著に「サントリー対キリン」(日本経済新聞出版社)。著書に「人事と出世の方程式」、「国産エコ技術の突破力!」、「ビール最終戦争」、「敗れざるサラリーマンたち」など。

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