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ユーロ圏のリスクはアジア経済にも打撃に

根本直子 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

 ギリシャの財政再建の見通しが不透明となっており、ユーロ圏のソブリン、銀行危機が再燃するのではないかという懸念が高まっている。今後さらに悪いニュースが続けば、株価や為替も不安定となり、グローバルな経済成長にもマイナスの影響を与えかねない。世界の牽引となっているアジア経済も打撃を受けるだろう。

 スタンダード&プアーズでは、2012年1月、ユーロ加盟国17か国のうち9か国について、財政収支や経済見通しの悪化、構造改革の遅れを理由にソブリン格付けを引き下げた。さらに4月に入って、スペインのソブリン格付けを、財政の悪化、銀行部門の不良債権の増加などを理由に、さらに2ノッチ下げている。

 当社の予想では、2012年のユーロ圏の経済成長率は0%で、年度後半から緩やかに改善し2013年には1%に回復する。また、米国は成長率2%程度で景気後退を免れ、中国は7.7~8.0%程度でハードランディングを避けられるとみている。ただし、ユーロ圏が深刻な景気後退に陥るリスクも40%程度あると予想しており、その場合は、輸出の減少や金融市場の不安定化を通じて、他国の成長率も低下を余儀なくされるだろう。 

 欧州危機は、多様なルートを通じてアジア地域に影響を及ぼすと予想される。

 第一にアジアは輸出に依存した構造であるため、欧州危機の再燃からの影響を受けやすい。例えば中国のユーロ圏への輸出額は全体の19%、インドは18%である。中国の成長率が仮に7%を下回るようなことになると、他のアジア諸国に大きな影響を与えうる。中国への輸出額が占める比率は、韓国は24%、香港は53%、日本は20%に上る。各国の金融政策がより緩和的になれば、景気にとってプラスとなるが、最近の石油価格の上昇とインフレ懸念は一段の金融緩和を難しくしている。

 第二に、

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