中口 威
2012年05月15日
■小康状態にある欧州の危機
EUとIMFの融資枠設定、金融機関の債権放棄などギリシャへの追加支援、そしてECBによる12月と2月、前後2度にわたる約1兆ユーロの資金供給(LTRO)などにより、欧州の財政・金融システムの危機は一旦沈静化した。しかしながら、ECBドラギ総裁の言葉を借りれば、これは所謂時間を買う政策であり、EU諸国は、与えられた猶予期間内に新しい財政協定を発効させ、抜本的な財政赤字削減策を進めうる、確固たる体制の整備を求められている。
■フランスとギリシャの選挙
しかしながら、5月6日実施されたフランスの大統領選挙では、ドイツとともに財政赤字削減路線を主導していた現職のサルコジ大統領が破れ、新財政協定の見直しを主張していたオランド候補が勝利した。また同日実施されたギリシャの総選挙では、第2次支援策実行の条件として財政赤字削減に合意していた連立与党が大敗し、その議席数は過半数を割り込んだ。
継続的な財政緊縮策による経済の失速、失業率の上昇、生活水準の劣化などに両国民が音をあげたわけだが、両国のみならず欧州諸国には、そもそも財政緊縮策を余儀なくされるに到ったその背景と経緯をよく思い起こしてもらいたい。
■欧州混乱の背景と経緯
2008年9月のリーマンショックをきっかけに、多大な不良資産を抱えた欧州の金融機関が経営難に陥り、これを救済するために各国政府が財政支出を拡大、景気浮揚策や金融機関への公的資金投入を実施した。加えて、ECBやFRBを中心とする中央銀行が金融を大幅に緩和し、膨大な資金を市場に供給した。欧州の金融機関は、この低利の資金を原資に、欧州各国の国債を大量に購入、その差益で業績を回復するとともに不良資産の償却を進めた。
結果として金融システムの危機は一旦沈静化したが、一方で、
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