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G8サミットと日本に投げかけられた課題

中口威

中口威 内外情勢アナリスト

G8のの評価

 G20が定例化されてG8の役割は終わったとよく言われる。残念ながらこの指摘を明確に否定する論拠は無い。

拡大写真撮影のため並んだ各国首脳ら。左から3人目は野田首相=2012年5月19日、米ワシントン郊外のキャンプデービッド

 確かに、財政が逼迫し、経済が低迷する先進諸国だけが集まって、成長著しい中国やインド、ブラジルなど新興国が参加していない会合にそれほど大きな影響力や実行力は期待できないとの指摘は事実であろう。一方で、G20は多様な文化や価値観が集うため、議論の集約に手間取る場面が少なくない。

 G8のように、価値観を共有する先進諸国だけが集まり、自由に討議することから得られる国際社会の課題への方向付けや、それに伴う各国政策への示唆が持つ意味は今も否定はできない。

首脳宣言について

 今回サミットの首脳宣言についても斬新さや具体性に欠けるとの指摘がある。財政再建と経済成長を両立すべき、ギリシャのユーロ圏残留を支持するなど、異論はないが、実現のための具体的な道筋は見えていない。財政余力にばらつきのあるG8諸国が一様に打ち出せる方策は見出しにくく、具体的な対応は各国の事情に委ねるようである。

 イラン、シリア、ならびに北朝鮮への対応についても、大統領の出席していないロシアや、サミットのメンバーではない中国にも配慮した議論が行われたようである。

 原油需給について、備蓄活用を念頭に置いたIEAへの要望を発している。産油国に対し、状況に応じた生産拡大を求めるなどの要請が盛り込まれてしかるべきところだが、現状の是認に留まっている。サウジアラビアなど産油国が参加していないことが背景にあるように思われる。

注目すべき課題

 一見して斬新性に欠けるように見えるかもしれないが、エネルギー・気候変動で、再生可能エネルギーへの取り組みをあらためて促したこと、食料安全保障で、民間資本・技術活用によるアフリカでの農業振興を打ち出したことに注目したい。

 原油価格が100ドル前後で推移している。新興国の経済発展でエネルギー需給は着実に逼迫する。中長期的に見て、有限である化石燃料の価格上昇は避け難い。シェールガスの開発で天然ガス価格が下がっている。

 しかし、シェールガスも所詮は有限の天然資源であり、いつか必ず枯渇し価格は上昇する。それゆえ、無限に供給できる再生可能エネルギーへの転換は、国際社会にとっていつか超えなければならない課題である。G8で議論された成長戦略の中心的課題に、更なる再生可能エネルギー普及への取り組みを据えるべきである。

 一方、膨大な人口を抱える中国やインドなど新興国の経済が発展し、 ・・・ログインして読む
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筆者

中口威

中口威(なかぐち・たけし) 内外情勢アナリスト

【退任】内外情勢アナリスト。1970年伊藤忠商事入社、鉄鋼原料部配属。資源開発大学校研修を経て、76~80年鉄鉱石事業会社出向(豪州駐在)。帰国後は資源開発業務を担当後、85~87年 日本商工会議所・東京商工会議所出向。帰社後は、海外企画統轄部などを経て、92年10月政治経済研究所に配属。以降経営情報室、産業調査室、グローバル・センサー編集長などを歴任。約20年間調査情報業務を担当し内外情勢分析業務に従事。2012年3月末伊藤忠商事を退社。

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