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日本国債は危ないのか?

榊原英資

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 アメリカの格付会社フィッチが日本国債の格付けをAAマイナスからAプラスに一段階引き下げた。韓国より低く、スロバキアと同レベル、スペインに近づいているといった状況だ。確かに日本の国債残高は900兆円に近づき、GDPの180%。いずれ近いうちにGDPの200%を超えると予想されている。

 しかし、他方で日本の家計の金融資産はグロスでは1400兆円、ネットでも1100兆円を超える。家計の金融資産のほとんどは銀行預金や郵便貯金、あるいは年金・保険の積立金である。この預金などが金融機関を通じて国債の購入に回り、日本国債の9割以上は日本人によって保有されている。そして当面こうした形のマネーフローが変わる気配はない。つまり、平均的日本人が預金などを円ではなく海外の資産に転換する可能性は極めて低いのだ。

 とすれば需給の状況から見れば、日本の国債マーケットは極めて安定的に推移している。しかも現在、世界的に資金は株式から債券に移動している。そんなことで十年国債の金利は0.9%を切り、歴史的に見ても極めて低い水準にある。確かにフローで見ても残高で見ても、日本の財政赤字は大きいのだが、日本人が自らこれをファイナンスしており、日本全体で見ると相変わらず世界最大の債権大国なのである。

 こうした現状をみればフィッチが日本国債を格下げするのは非常識であると言わざるを得ない。供給が多くても需要が十分あれば、その商品の市況は安定しているのである。市況が安定しているのになぜ格下げをするのか。確かにこの状況が5年、10年と続けば日本の財政は危機的状況に陥るだろう。しかし、

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