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生活保護 自分の身になってみると……

浜田陽太郎 朝日新聞・論説委員兼グローブ記者

 人気お笑い芸人の母親が生活保護を受給していたことを契機に巻き起こった騒動。思ったより波紋がひろがっている。日本社会に余裕がなくなっていることを反映しているのかもしれない。

 世間の目の厳しさに押されて、厚生労働省は「扶養義務の履行を厳格化する」ような制度改正も視野に入れている。

 これに対して、反貧困運動の弁護士らは「扶養義務の過度な強調は、親族関係を決定亭に破壊し、自死・餓死・孤立死を招く!=緩慢なる死刑と同じ」と激しく反発。そんな構図だ。

 

 しかし、女手ひとつで子どもを育てた母。その「オカン」との仲の良さを売りにしながら、人気タレントになり多額の収入を得るに至る息子…というのは、極めてレアなケースだろう。なかでも珍しいと感じるのは、「生活保護受給者と扶養義務者の仲の良さ」である。

 ゲイのカップルが主人公の人気漫画「きのう何食べた?」(よしながふみ作)の5巻を読んでいたら、印象深い場面があった。

 ヘアスタイリストのケンジのもとに、千葉市役所から一通の封書が届く。なかに入っていたのは、「扶養義務の調査について」。

 「生活保護法では民法に定められている近親者からの扶養をいちばん先に求めることになっております。そこで、あなたの資力に応じ、できる範囲内で扶養援助をしていただきたく、別紙届出書によりご回答下さい」

 この通知、ケンジの父、賢一が生活保護を受給しているため、毎年、家族のもとに送られてくる。

 ケンジの回想シーン。「俺が物心がついた時には、とーちゃんもう女と逃げた後で。何年かにいっぺんお金を奪(と)るために帰ってきて、ちょっと家族に暴力ふるってまだどっかに行っちゃうおじさんて感じな人で」

 最初に通知が送られてきたのは20年前。受け取ったケンジの母(つまり、賢一の妻)は、「『経済的余裕は無いので扶養出来ません』って返事出しとく」。子どもたちもうなずいた……。

 まあ、普通はこうだよなあ、と思う。別の女をつくって逃げたあげく、カネをせびりにに帰ってくるような男のために、扶養義務を果たしたくない気持ちはよくわかる。

 今回、扶養義務について調べてみて、びっくりしたのは、その範囲の広さだ。

)を見てほしい。

拡大(図)出典:生活保護手帳2011年度版166ページ

 兄弟姉妹はもちろん、遠くは曽祖父母・曽孫まで、「直系血族」は、民法上の「絶対的扶養義務者」である。自治体の福祉事務所は、保護の申請者に、この範囲の親戚について確認することにになっている。つまり、「扶養をお願いできないか」という通知が来る可能性がきわめて高いということだ。

 一方、

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筆者

浜田陽太郎

浜田陽太郎(はまだ・ようたろう) 朝日新聞・論説委員兼グローブ記者

1966年生まれ。神奈川県鎌倉市出身。90年、朝日新聞社に入社。振り出しは仙台支局。AERA発行室、経済部を経て、くらし編集部で社会保障の取材を始める。2001~02年、フルブライト奨学金を得て、米ミネソタ大でパブリック・ジャーナリズムを研究。その後、首相官邸や厚生労働省の記者クラブ、長野総局などに勤務。2010年7月から論説委員兼グローブ記者。

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