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「原子力村」より福島の人々の声こそ聞くべきだ

小森敦司 朝日新聞経済部記者(エネルギー・環境担当)

 頭がクラクラする。関西電力の大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働が決まった。放射性物質の大量放出を防ぐフィルター付きベント(排気)の設備が整っていないなど、安全対策で積み残しがあることは明白だ。だが、財界からは、すぐさま歓迎するコメントが出された。

 「安全性の確保に向けた政府の努力と地元自治体の再稼働に対する理解の下での今回の決定を評価する。ほかの原子力発電所も再稼働が進むことを期待する」(米倉弘昌・経団連会長)

 「我が国経済と国民生活は原子力発電の稼働なしには成り立たない。今回の決定は高く評価する。ほかの原子力発電所も、安全確認を最優先しつつ、できるだけ早期の再稼働を推進していただきだい」(友野宏・日本鉄鋼連盟会長)

 東京電力福島第一原発事故から、まだ1年3カ月しか経ってない。事故のせいで16万人もの福島の人々が避難を強いられた。なのに、コメントは、全国の停止中の原発を再稼働に持ち込みたいとの思いを隠そうともしなかった。

 ここのところ、福島の事故被害者や原発を減らしたいと願う人々への挑戦状と言えるような「原子力村」の動きも目立っていた。

 国の原発政策の推進役だった望月晴文・元経済産業事務次官は近く、原子炉メーカーの顔も持つ日立製作所の社外取締役に就く。年間で推定約2000万円の報酬を得る。氏は事故の後の講演でも、原子力発電の必要性を訴えてきた。

 東電に目を転じれば、事故当時、トップだった清水正孝前社長が石油精製会社の富士石油の社外取締役になるという。勝俣恒久会長は、3基の原発を持つ日本原子力発電の非常勤の取締役に再任される。武井優副社長や高津浩明常務らも親密な企業に次々と「天下り」していく。

 まるで「東電に事故の責任はない」と言っているかのようではないか。こんな調子では、白紙で見直されるはずの国のエネルギー基本計画の議論の行方も、危うくなりそうだ。

 ネット上では、議論を取り仕切る経済産業省の安達健祐事務次官が娘を東電に就職させていたことや、資源エネルギー庁の今井尚哉次長が日本原子力産業協会の今井敬会長(元経団連会長)のおいであることで、国のエネルギー政策がゆがめられているのでは、との推測が飛び交う。

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筆者

小森敦司

小森敦司(こもり・あつし) 朝日新聞経済部記者(エネルギー・環境担当)

東京都出身。1987年入社。千葉、静岡両支局を経て、名古屋や東京の経済部に勤務、金融や経済産業省を担当。ロンドン特派員も経験し、社内シンクタンク「アジアネットワーク」では地域のエネルギー協力策を研究。現在、エネルギー・環境分野を担当、とくに原発関連の執筆に力を入れている。著書に「資源争奪戦を超えて」「日本はなぜ脱原発できないのか」、共著に「失われた〈20年〉」、「エコ・ウオーズ~低炭素社会への挑戦」。

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