2012年06月23日
ヨーロッパ危機がギリシャからスペイン、さらには南ヨーロッパ全体に拡大する気配を見せ、ヨーロッパの没落が明白になってきた。1918年、第一次世界大戦直後にオズワルト・シュペングラーが「西洋の没落」を書き、ヨーロッパの没落を警告し、実際、この時期から第二次世界大戦までの間に世界経済の中心はヨーロッパからアメリカに移っていったのだった。
爾来、アメリカは世界のスーパーパワーとして世界経済の中心的役割を果たし続けてきた。今でもアメリカは世界一の超大国だし、ドルは世界の基軸通貨であり続けている。しかしそのアメリカが、今や大崩壊のプロセスにあるとジェフリー・サックスは「世界を救う処方箋」の中で警告する(ジェフリー・サックス著、野中邦子・高橋早苗訳、早川書房、2012年)。
ジェフリー・サックスは現在コロンビア大学地球研究所所長、パン・ギムン国連事務総長の特別顧問も務める著名なエコノミスト。異例の若さ(29歳)でハーバード大学教授に就任し、以来、南米、東欧、そしてアフリカ諸国に深く関わり、世界の貧困を根絶するための活動を続けてきている。
そのサックスが本書ではアメリカに目を向け、アメリカは没落の局面に入ってしまったと論じている。増大する一方の貧富の格差、社会の分断、教育の劣化、巨額の財政赤字と政治腐敗、そしてグローバリゼーションへの対応の遅れとアメリカの危機、その病状は加速度的に悪化しているというのだ。
サックスによればその主たる原因は「行き過ぎた消費文明と異常なまでの富の追求」だという。そしてこうした認識は多くの国民によって共有されているという。「今のアメリカに不満だ」という国民の割合は、
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