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 ギリシャの再選挙では、急進派が緊縮財政を放棄して欧州連合(EU)と決裂するというハードランディングはひとまず回避された。

 とはいえ、緊縮財政派の第一党が有効な政策を打ち出せるのか、EUとの妥協点を見出せるのか、など課題は多い。

 S&Pでは、ギリシャがユーロ離脱に至る可能性はなお3分の1程度ある、とみている。今後はより経済規模の大きいスペイン、イタリアへの波及が回避できるのか、特にスペインの銀行危機の解決が鍵となるだろう。

ギリシャのユーロ離脱がもたらす影響

 今回のギリシャの総選挙は、政府、市場関係者にとってギリシャ離脱のシナリオを分析する機会となった。ギリシャが仮にユーロを離脱した場合、通貨の大幅下落、銀行の取り付け、外貨建てで借り入れをしている企業の破綻、ハイパーインフレ、経済の深刻な落ち込み、が生じるだろう。

 輸出産業に乏しい同国では、為替の低下によるメリットは少ない。2001年に債務不履行となったアルゼンチンでは、食料や石油が自給できたが、食料の40%を輸入する同国では、生活必需品が不足し、社会不安が高まり、外貨獲得の頼みの綱である観光も激減するだろう。

 ギリシャ経済の規模はユーロ圏の2%程度と小さいが、ユーロ離脱の前例を作ることは、他国へのリスクの波及につながる。ポルトガルやアイルランド、スペイン、イタリアなどで、銀行の預金流出と信用収縮、長期金利の上昇、資産価値の低下が生じる。ユーロ圏全体の経済成長率は大幅に低下し、欧州の銀行は貸出や有価証券の損失から、資本不足に陥ることになる。

 今回の選挙では、このような最悪のシナリオの実現は一応回避されたが、ギリシャの経済再建は容易ではない。

 2012年の一般政府の財政収支はマイナス7.3%(GDP比)と高く、2012年のGDP成長率の見通しはマイナス5%程度とユーロ圏の中でも飛びぬけて低い。

 仮にギリシャの財政再建が順調に進み、EUが欧州の銀行業界に対する市場の不安を取り除いて、しっかりしたセーフティネットを築くことができれば、欧州債務危機は解決に向かうかもしれない。しかし、6月28、29日の欧州連合首脳会議で、実効性のある政策が出される見込みは少ない。

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筆者

根本直子

根本直子(ねもと・なおこ) 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

日本銀行、S&Pグローバル、マネージング・ディレクターを経て現職。主なリサーチ分野は、金融機関経営、日本およびアジアの金融市場、包摂的成長。 早稲田大学法学部、シカゴ大学経営大学院、一橋大学商学研究科、商学(博士) 主な著書に「韓国モデルー金融再生の鍵」「残る銀行沈む銀行―金融危機後の構図」 財務省 関税・外国為替等審議会委員、中部電力、コンコルディア・フィナンシャルグループ社外取締役、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 経営管理委員。

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