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自殺と消費税

高谷秀男

 消費税は滞納が多い。税収は、一般会計に入る国税全体の4分の1しかないのに、新規滞納額は国税全体の半分を占める。

 国税庁が発表した最新の2010年度の統計によると、10年度中に新たに発生した消費税の滞納額は3398億円にのぼり、申告所得税の1265億円、法人税の1025億円、源泉所得税の702億円を上回り、国税の滞納全体の49.7%を占めた。この額は、税率1%の地方消費税分を除いた数字であり、いわゆる消費税の滞納額はその1.25倍に達するはずだ。

 消費者はちゃんと払っているつもりでも、事業者から税務署に納める段階で滞る。納期限は毎年度末。期限を過ぎて50日までに督促状が発布されると滞納になる。10年度の新規滞納額は1件平均53万円だった。うっかりや故意もあるだろうが、期限を過ぎれば延滞税がかかるし、督促状までの余裕期間を考えれば、滞納の多くは少額でも払えないケースだろう。

 事業者によっては、厳しい価格競争にさらされて、そもそも消費税分を売値に上乗せできなかったり、一部しか転嫁できなかったりすることがある。そうなると、事業者は経費を削り、自腹を切って消費税を納めることになる。法人税や所得税なら赤字で所得が無ければ課されないが、消費税は赤字でも納税しなければならない。事業者の資金繰りの苦労が目に浮かぶ。

 このため、消費税率が3%から5%に引き上げられた97年度は、消費税の新規滞納額が前年度比25.5%も急増し、5395億円にのぼった。翌98年度はさらに34.4%も増え、7249億円に達した。

 98年は自殺者数も急増した年だ。警察庁によると前年比34.7%増え、初めて3万人を超えた。うち自営者は4355人で、前年より1327人、率にして43.8%増えた。職業別の6分類で最も高い増加率だった。

 筆者は、この二つの数字の急増に着目し、

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