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ドイツのユーロ離脱という汎欧州的悪夢

浜矩子 同志社大学大学院教授(国際経済学)

 ギリシャの総選挙結果が固まった。いずれの政党も単独過半数を確保することは叶わなかった。新民主主義党がひとまず多数を得た。だが、単独で政権を形成することは出来ない。連立協議が進行中だ。

 少し前の主導的政党だった全ギリシャ社会民主主義運動(PASOK)に加えて、小振り勢力の民主左派を取り込んだ政権づくりが目指されている。対抗勢力として脚光を浴びた急進左派連合は、政権奪取こそ実現しなかったものの、しっかり存在感を高めた。

 端的にいって、これは最悪の結果だ。要は、何事にも決着が着いていない。今回の選挙は、5月に実施された当初選挙のやり直し投票だった。あの時と違って、今回は、何とか連立政権の樹立にこぎ着けるかもしれない。だが、違うのはこの点だけだ。勢力拮抗する中で、ユーロ圏内におけるギリシャの放蕩息子的位置づけには何ら進展がない。

 誰もが予期しながら、誰もが恐れていた。それが今回の結果だろう。ここで思い出すのが、「その名を明かせない愛」というフレーズだ。19世紀末のアイルランドが生んだ奇人・変人・大天才の文学者、オスカー・ワイルドがお好きな向きには、すぐお解り頂ける言葉だ。その名を明けさせない愛の正体は、同性愛だ。ワイルドの恋人、ビジュアル系男子のアルフレッド・ダグラス卿の筆になる詩の一節である。

 ギリシャの今回の選挙結果を巡っても、誰もが決してその名を明かせない願望があった。それはGrexitだ。ギリシャ語が大好きだったワイルドなら、この言葉の出現をどれほど面白がったことか。いうまでもなく、

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