2012年07月02日
「グローバル化が進むほどに、自分のヴィレッジ(村)が大切になる。つまり、グローバルに活躍できる人材にとっては、出身地域や家族、そのルーツといった力強いローカルなアイデンティティーが基盤となる」
日産自動車のカルロス・ゴーン社長は話す。慶応大大学院経営管理研究科で6月19日、ゴーン社長は大学院生ら約500人を前に講演をしたが、質疑応答での発言である。
我が国は急速な少子高齢化を迎えているため、「世界で活躍できるグローバル人材を育成したい」と訴える企業関係者は多い。海外赴任を前提に学卒者を採用する電機メーカー、若手社員を特定の国や地域に派遣させるビールメーカーなど、グローバル人材育成を目指す動きも急だ。
すでに、7、8年前には有力大学が国際〇△学部といった学部を、相次いで新設した。ある大学は授業を英語にしたり、また別の大学はマンガをはじめ日本のサブカルチャーを教材とするなど、世界に通じる人材育成のアプローチは高等教育の場でさまざまな形として展開されてきた。
しかし、もっと基本的な部分において「心の拠り所となる、自分の村に愛着を持て」と、国際的経営者の代表格でもあるゴーン社長は訴える。
さて、実は同じ内容を、日本人経営者であるキヤノン電子の酒巻久社長(キヤノン元常務)も話している。「国際的なビジネス社会では、自分の意見を正しく主張する必要があるが、そのためには自分の郷里に誇りを持つのは基本。でないと、世界のどこに行っても信用されない」と主張する。
酒巻氏は元々はエンジニアだが、欧米を中心に海外でのビジネス経験が豊富だ。
特にキヤノンの役員時代に、アップルの創業者である故・スティーブ・ジョブズ氏と一緒に仕事をした。85年にアップルを追われたジョブズ氏はネクストコンピューター社を立ち上げた。キヤノンは89年にネクストに出資した縁で、
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