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日本航空の好業績は実力か?

松浦新 朝日新聞経済部記者

拡大日本航空のボストン線初便に乗り込む乗客ら=2012年4月22日、成田空港

 5000億円もの借金を免除してもらい、国から3500億円の出資を受けて、国の企業再生支援機構の後ろ盾でスピード再生した日本航空(JAL)が秋には上場するという。なぜ、こんなに簡単に回復したのか。今後もこの調子が続くのか。実態を調べると、どうも釈然としないことが多い。

 6月21日朝、永田町の自民党本部7階で開かれた航空部会は、次々に発言を求める自民党議員の熱気に包まれていた。

 主なテーマになったのは今年9月にも再上場するといわれているJALの「処遇問題」だった。JALが会社更正法を申請したのは2010年1月。同年11月に更生計画を認められたかと思ったら、翌年3月には更生手続きを終了した。前期までの2期連続で2000億円前後の営業利益をあげる急回復ぶりに、疑問の声が噴出したのだ。

 国交省航空ネットワーク部の篠原康弘部長の説明が終わるや、河野太郎衆院議員が立ち上がって発言した。

 「不採算の路線は撤退し、借金は棒引きで金利がなくなり、赤字で税金は繰り延べされ、という圧倒的優位な状況を、むしろこれまでサボっていたところが得て、頑張っているところが不利になる、というのはやっぱりおかしいと思う」

 大きな問題として指摘したのは航空会社の利権であるスロット(発着枠)の問題だった。

「いま、JALが持っているスロットをどこまで減らすのか。それをANAとか、その他増えてきた小さい航空会社に受け渡すなりして、JALのスロットを100に対して25とか30に減らして……」

 スロットとは、飛行場に発着する権利だ。大都市近郊の利用者が多い空港の発着枠は、世界中の航空会社がほしがる。この枠を持つのは国なので、国交省がどこの飛行機会社に与えるかを決める。

 航空会社の関係者が話す。

 「経営破綻したエアラインは国際線で飛ばせなくなります。(代金が支払われないかもしれないので)給油ができなくなりますから。ところが、JALの場合、国が大使館、公使館を通じて運行を保証すると航空関係者に伝えたので、飛ばし続けることができた。それでスロットを守ったのです」

 スロットは路線の相互の国が認めないと維持できない。いくら国交省がJALをかわいがっても先方が認めなければ、それまでなのだ。

 こうしてスロットは守られ、ロンドン、フランクフルト、パリといった、どこの航空会社も乗り入れたい空港へのJALの路線は生き残った。一方、JALは、今回の破綻にともなって、不採算路線を思い切って整理した。国内の赤字ローカル線だけではなく、イタリア、オランダ、メキシコ、ブラジルといった国際線も赤字続きで廃止したという。

 一方、羽田空港の国際線ターミナル新設にともない、8枠できたスロットのうち、半分は外資系に、残り半分は国内勢に割り当てられた。それは、JALとANAで2枠ずつ分けあったのだ。

 関係者は「EUであれば、政府の支援を受けた会社は事業の拡大が認められない。JALはそれどころか、格安航空会社(LCC)のジェットスターにも出資している。なぜ、なにごともなかったかのような企業行動が認められるのか」とあきれる。

 こうしたバックアップに、銀行団による5200億円の債権放棄、国からの3500億円の出資、飛行機などの資産の評価の引き下げにともなう減価償却負担の軽減もある。

 この結果、

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筆者

松浦新

松浦新(まつうら・しん) 朝日新聞経済部記者

1962年生まれ。NHK記者から89年に朝日新聞社に転じる。くらし編集部(現・文化くらしセンター)、週刊朝日編集部、オピニオン編集部、特別報道部、東京本社さいたま総局などを経て現在は経済部に所属。共著に社会保障制度のゆがみを書いた『ルポ 老人地獄』(文春新書)、『ルポ 税金地獄』(文春新書)、『負動産時代』(朝日新書)などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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