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不思議な国の政党政治

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 政党とは、主要な政策について意見を同じくする人たちの集まりである。我が国の国民・有権者だけでなく、世界中の人も同じように理解しているはずである。しかし、日本という国の千代田区永田町にある民主党という建物の中だけは、そのような理解が共有されていないようだ。

 消費税増税をめぐり、民主党が分裂した。離党した小沢元代表は民主党のマニフェストに消費税引上げを書いていないとして、増税反対の大義は我にありと主張した。しかし、小沢氏はマニフェストに掲げた政策の実現に政治生命をかけていたのだろうか?

 「コンクリートから人へ」の象徴だった八ッ場ダムの建設中止、高速道路無料化など、マニフェストの主要項目のほとんどは実現していない。マニフェストを重視すべきだと主張する実力者の小沢氏がその実現に努力した形跡は見られない。それどころか、2009年末幹事長だった小沢氏は鳩山首相に働きかけ、マニフェストにあったガソリン税の暫定税率廃止を事実上撤回させている。

 今回、小沢氏は「増税の前にやるべきことがある」と主張した。マニフェストで増税をしないというのも、16.8兆円の財源ねん出が前提だった。しかし、これまで、小沢氏が財源ねん出という「増税の前にやるべきこと」に努力した形跡はないし、今では、民主党の誰もが16.8兆円の財源ねん出は絵にかいたモチだったと認めている。マニフェストは、選挙で勝つことを目的とした、実現性も整合性もない政策のかき集めだった。

 小沢氏のグループは、消費税引上げにも、TPPにも、反対した。しかし、1994年国民福祉税を主張して消費税の引上げを主張したのは、小沢氏ではなかったのか?ガット・ウルグァイ・ラウンド交渉以来、一貫して農産物貿易の自由化を唱え、数年前の著書で、政府から戸別所得補償という補助金を農家に交付することで、「関税ゼロでも食料自給率100%」と主張したのは、小沢氏ではなかったのか?

 政策を実現するために権力を掌握するのである。かつて、小沢氏の「普通の国」という主張には、特定の政策目的のために政界を再編成するという響きがあった。そこには、これまでの日本の政治家からは伝わってこなかった新鮮な政治家像があった。しかし、現在の小沢氏の場合、選挙に勝つこと、権力掌握だけが自己目的化してしまったようだ。増税反対、原発反対を叫べば選挙で票が入ると考えているのではないだろうか。

 それでも、民主党と袂を分かった小沢氏たちの行動は政党人としては納得できる。基本となる政策について、意見や主張が異なる人が同じ党派を形成するのは、いかにも不自然だし、有権者を欺くものだからだ。

 しかし、理解できないのは、明確な意思を持って、社会保障・税一体改革関連法案に反対、棄権をした人たちが、依然民主党にとどまろうとすることだ。信念を持って反対したのであれば、

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