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技術流出防げるか――し烈になる人材引き抜き

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 日本の先端技術の研究者や技術者を、韓国や中国企業が好待遇で雇用する動きが強まっている。とくに韓国企業は1990年代から日本人技術者をスカウトし、手っ取り早く技術やノウハウを獲得してきた。ここへ来て家電業界の大量リストラで技術や人材がさらに流出する事態が予想される。

 しかし「日本の技術を守れ」と叫ぶだけでは何も解決しない。筆者が懸念するのは、昨今、日本企業の新技術開発にかける意欲が薄れ、技術者の開発環境や処遇が悪化。優秀な人材ほど自分の意思で企業を離れて行く傾向が強まっていることだ。「技術は上から下に流れる」が習いとはいえ、今起きている事態は容易なことではない。

 サムスン電子は1990年代から日本人技術者を顧問に雇い入れ、電子技術を習得してきた。当時、製品の品質は悪く世界の評価は低かった。顧問は週末だけソウルに通う人を含め約80人。東芝の半導体技術(DRAM、フラッシュメモリー)やソニーの画像技術などが流出した。

 デザイン分野では、デザイナーの福田民雄氏(現在京都工芸繊維大学教授)に教えを乞うた。福田氏はサムスンのデザインの劣悪さを93年に社内リポートで指摘。李健煕(イ・ゴンヒ)会長がそれを読み、以後デザイン重視に転換し、今では世界7か所にデザインセンターを設けている。

 ケータイで使う積層セラミックコンデンサーも技術流出が疑われている。2000年代半ばからサムスングループのSEMCOのシェアが急伸し、独占していた村田製作所やTDKのシェアが食われている。微小な部品で製造には緻密なノウハウの蓄積が必要だ。業界では「10人以上の日本人技術者が引き抜かれた」と言われる。

 現在のサムスン電子のやり方は表面的には少しスマートになっている。日本の先端技術情報を収集・分析し、有能な人材を探し出す拠点になっているのは「サムスン横浜研究所」(横浜市鶴見区)だ。ターゲットを「日本が得意とする6分野」(画像、光学メカ、半導体、エネルギー・材料、無線通信、家電)に絞り、メーカー・大学・研究機関で研究開発を3年以上経験した即戦力を集めている。

 「日本が得意とする6分野」とは要するに、

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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