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中国は建設投資主導からの脱却を

中口威 内外情勢アナリスト

減速する中国経済

 中国経済の4~6月期成長率は、6四半期連続して減速し、前年同期比7.6%増にとどまった。

 欧米経済低迷に伴う輸出の減少、高額住宅など不動産ならびに生産設備が余剰で固定資産投資が頭打ち、高速鉄道事故などによる公共事業の減少、家電下郷や汽車下郷など補助金による駆け込み需要終了に伴う個人消費の反動減など、さまざまな要因が重なり経済成長が継続的に減速している。

 中国政府は昨年12月以来3度にわたり預金準備率を引き下げ、6月と7月には2ヶ月連続して利下げを実施するなど金融緩和を進めている。また6月には、省エネ家電などへの年間265億元の補助金を復活した。さらに、5月半ばよりは、高速鉄道建設再開をはじめ、公共事業の許認可を加速し、経済梃入れ策に舵を切っている。しかしリーマンショック後の4兆元の大型経済対策が不動産バブルや設備の余剰などを引き起こしたとの反省から、このような大型経済対策を再度実施することは、現時点では考えていないようである。

今後の展望

 短期的には、先週はじめの長江三峡ダム上流の豪雨・洪水による物流機能マヒが、引き続き高い成長が期待される重慶や成都経済圏に与える影響も気になる。この影響が軽微との前提ではあるが、おそらく中国政府は、各種経済政策を駆使し、本年後半には8%台を回復、2012年通年では8%前後の経済成長を確保するのだろう。そして公共事業による建設投資の拡大などで都度下支えしつつ、第12次5ヵ年計画中(2011~15年)は、7.0%~8.0%成長維持を目指すものと思われる。

 しかしながら、2013~15年には労働生産年齢人口がピークを迎えるといわれ、一人当たりのGDPも5000ドルを超した中国が、建設投資に大きく依存する形で、従来のような高い成長率を維持することは難しくなるだろう。2015年から2020年にかけて、経済成長はさらに減速し5%~7%の範囲で推移、おそらく限りなく5%に近い安定成長期に向かうのではなかろうか。

中国の財政事情

 中国は未だ財政的には十分余裕があるゆえ、必要があれば、財政政策で成長を支えることができるとよく言われるが、はたしてそのとおりであろうか。中央政府の債務残高20%、地方政府の債務残高20%というのがよく引き合いに出される数字であり、合計未だ40%程度ゆえ先進諸国に比べ財政余力があるという。

 だが一方で、地方政府の資金調達用プラットホーム(地方融資平台)の債務残高が15兆元を超すと言われ、これはGDP比約32%である。そしてこの殆どがリーマンショック以降に調達され、地方政府主導の経済対策に使われてきた。

 これに加え、4大商銀を中心とする実質的な政府保証付きの金融機関の貸し出し残高が2011年末で約55兆元あり、これはGDP比で約115%にも昇る。そしてこの55兆元のうち25兆元が、リーマンショック後の2009年から2011年の僅か3カ年で拠出されている。

 金融機関の貸し出し残高と地方融資平台の債務残高は重複する部分もあるが、このかなりの部分が、固定資産や建設投資などに投入され、このうち、例えば高額すぎて売れない住宅、利用度の低い鉄道や道路、稼働率の低い生産設備などに費やされたものもけっして少なくはない。そして、このぶんの投下資本の回収は必ずしも容易ではない。

 仮に不良債権化した場合、その貸し出し残は政府の隠れ債務であり、これらも合わせると、国と地方の債務残高はすでにGDPの70%を超したと言われる。

 それゆえこのような手法が引き続き有効で、今後中長期にわたって、中国経済の健全な発展を保全するようには到底思えない。

持続的な経済成長に向けて

 中国経済のGDP構成比を大まかに分類すると、

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筆者

中口威

中口威(なかぐち・たけし) 内外情勢アナリスト

【退任】内外情勢アナリスト。1970年伊藤忠商事入社、鉄鋼原料部配属。資源開発大学校研修を経て、76~80年鉄鉱石事業会社出向(豪州駐在)。帰国後は資源開発業務を担当後、85~87年 日本商工会議所・東京商工会議所出向。帰社後は、海外企画統轄部などを経て、92年10月政治経済研究所に配属。以降経営情報室、産業調査室、グローバル・センサー編集長などを歴任。約20年間調査情報業務を担当し内外情勢分析業務に従事。2012年3月末伊藤忠商事を退社。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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