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ネット就活の終焉と就職格差社会の出現

常見陽平 千葉商科大学国際教養部准教授 いしかわUIターン応援団長  社会格闘家

誇張される「就活かわいそう」報道の陰で

 「就活生かわいそう報道」がここ数年メディアをにぎわせている。確かに、リーマン・ショック以降、新卒の求人数も内定率も悪化し、就活のあり方が議論となり、新卒一括採用への批判が相次いだ。

ただ、報道する方が過熱し、「交通費で100万円かかった」「就活のために整形した」「など、極端で耳目を集めるような事例が一人歩きした感も否めない。数字の一人歩きもそうだ。例えば、「100社受けてすべて落ちた」という報道をよく目にするが、たいていは就職ナビサイトでクリックしてプレエントリーしただけの数であり、多くは就活を始めた最初の月に集中している。つまり、「とりあえず応募してみた」程度の数字がひとり歩きをして、「何十社受けても内定をとれない」という話になって広がっているのだ。

 では、現在行われている2013年度新卒採用では何が起こったのか。これから始まる2014年度新卒採用で何が起こるのか。その実態と大胆な展望を示してみたい。

倫理憲章改訂で、大手企業と上位校学生のマッチングが盛んに

 2013年度新卒採用の大きな変化と言えば、倫理憲章の改訂である。採用広報活動のスタート時期は、大学3年生の12月1日になった。選考開始は4月1日となったので、大手を中心に考える場合は、実質短期化したといえる。

 経団連は7月17日に発表した「2014年度入社対象の「採用選考に関する企業の倫理憲章」について」において、「多くの企業が倫理憲章を遵守したことで、早期化の歯止めに一定の効果が見られています」との見解を発表した。

しかし、私はこの文章を、次のように修正したい。「多くの企業が倫理憲章を遵守したふりをしたことで、もともと大手企業が欲しがっている上位校学生の早期化の歯止めに一定の効果が見られています」と。

 倫理憲章の改訂による影響だけではないが、2013年度採用の前半戦においては、「大手企業」に「優秀学生」が行く動きが促進されたと私は見ている。

 HR総合調査研究所(HRプロ株式会社が運営)が発表した「2013年度新卒採用中間総括調査」によると、4月下旬時点での内定率(文系)は旧帝大クラスにおいては71%、早慶クラスは73%だった。しかも旧帝大クラスの40%、早慶クラスの36%の学生は2社以上から内々定が出ている。

低い中堅以下の私大の内定率

 それに対して、中堅以下の私大に通う学生は約70%が内定ゼロ。震災、倫理憲章改訂などがあり単純比較はできないが、上位校は内定率が上がり、中堅以下の大学は下がるという傾向が鮮明に見てとれる。なお、内定率のデータは調査方法や調査主体により大きく変わるので、リクルートやマイナビが発表したデータとはズレがあり、やや高めに出ていることには留意が必要だ。

 同調査ではこの3年間、採用活動においてターゲット校を設定しているかどうかを調査している。2011年卒では33%の企業がターゲット校を設定していたのだが、年々上昇しており2012年卒は39%、そして今年の4年生の代である2013年卒においては48%の企業が設定していた。ターゲット校を設定している企業のうち、約80%は20校以内に絞っている。従業員数300名以下の企業に関しては10校以下に絞っている企業が70%だ。

 広報活動の開始が遅くなり、大手を中心とした選考開始時期は同じであることから、結局のところ、

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