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日本はなぜブロンズ・コレクターなのか

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 日本は、ロンドン・オリンピックで金7個、銀14個、銅17個、計38個のメダルを得て、過去最多のメダルとなった。私には、男子のサッカーで銅を取れなかったことだけが残念だが、素晴らしいことと思っている。

 ただ、金が少ないことを問題にする人もいる。確かに、金銀銅のメダルの数は皆同じだから、平均的には全部のメダルの3分の1の数の金メダルが取れるはずだ。すなわち、日本は金メダルを38個の3分の1で12個か13個取れるはずだった。

 実際にアメリカの雑誌、スポーツ・イラストレーテッドは、開会直前に、日本は金12個、銀14個、銅13個、合計39個と予想していた(読売新聞2012年7月24日による)。アメリカの雑誌は、日本はどのメダルもほぼ同じ数と予想していた訳だ。

日本は1976年までゴールド・コレクターだった

 ただし、米誌の予想は、水泳、お家芸の柔道などでもう少し金メダルや他のメダルが取れると予想していたが、これは外れた。むしろあまり期待されていなかった種目でメダルが取れたと言えるだろう。何しろ、何十年ぶりのメダルという言葉が何度も新聞紙面に躍った訳だから。

 日本がブロンズ&シルバー・コレクターであるのは、ここ数十年のことである。1988年のソウルオリンピック以来、アテネと北京以外では、全メダルに占める金の比率は3分の1を下回っていた。

 ただし、1964年の東京から84年のロサンゼルスまでは、金の比率はほぼ3分の1を上回っていた。うち、ロサンゼルスは東側諸国が不参加だったから、日本が実質的に金メダル・コレクターだったのは76年のモントリオールまでだったとなる(80年のモスクワはソ連のアフガン侵攻に抗議して西側諸国は参加しなかった)。

 すなわち、日本が集団主義で高度成長に邁進していた時、金メダルを取れていた。一方、ロンドンでの北朝鮮は金4個、銅2個、合わせて6個と、金メダル比率が異常に高い。

 こういうことから、私は、日本がブロンズ&シルバー・コレクターであるのは、現在、人々が自分の好きなスポーツに打ち込み、その結果、思わぬ競技で銅や銀が取れたということではないかと考えた。それは、日本が自由で豊かでまだまだ余裕があるということだから、素晴らしいことではないかと考えたのだ。

社会の自由度とブロンズ・コレクターであることとは関係があるか

 この考えが本当に正しいかを示すために、どんな国がブロンズ&シルバー・コレクターであるかを見てみた。図1は、メダルの総数が5つ以上で、かつ金を1つ以上取っている国の、全メダル数に占める金の割合である。図には平均である33.3%を横線で書いているので、この線から上がゴールド・コレクター、下がブロンズ&シルバー・コレクターである。

 

 確かに、北朝鮮は驚異的なゴールド・コレクターであるが、

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