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新たな展開を模索する日ロエネルギー・経済協力

中口威 内外情勢アナリスト

日ロ首脳会談と北方領土問題

 メキシコ・ロスカボスで6月18日にあったG20首脳会議の際、日露首脳会談が行われた。ロンドン五輪で両国選手が着用する柔道着を交換するなどの演出もあって、野田首相とプーチン大統領との初めての会談は和やかな雰囲気のなかで行われたようである。そしてそのなかで、北方領土交渉の再開や極東ロシアにおける経済協力の推進などいくつかの合意事項が確認された。

 これを受け、7月28日には、黒海沿岸の保養地ソチで日ロ外相会談が行われた。玄葉外相は席上、7月初めメドベージェフ首相の国後島再訪への遺憾の意を表明したが、ラブロフ外相の反応は、「クリール諸島は大戦の結果ロシア(旧ソ連)の領土となったもので、ロシア政府には地域の社会と経済の環境を整備する責任がある。首脳の訪問は続く」というものであった。同時に、玄葉外相はプーチン大統領とも会談し、「平和条約を締結することで、日本とロシアは良好なパートナーとなりうる」旨を伝えている。

 1956年10月の日ソ共同宣言(平和条約締結後、歯舞・色丹の2島返還)を交渉の出発点とした、2001年3月森首相とプーチン大統領のイルクーツク声明が拠りどころになるわけだが、旧ソ連から引き継いでロシアが実効支配を進めている北方四島の、領土回復への道のりはけっして平坦ではない。交渉を前進させるには、ロシア政府が、そうすることの理由をロシア国民に説明できるような、なんらかの環境設定が必要となるだろう。

ロシアの東方シフト

 欧州経済の混迷を受けて、ロシアのエネルギー資源に対する欧州諸国の需要は明らかに減退している。加えて、米国をはじめとし、世界的に開発が始まったシェールガスや、新たにアフリカで発見された巨大ガス田などの影響もあって、天然ガスの需給は緩和し、ロシアから欧州諸国へのエネルギー供給交渉もその力関係が微妙に変化しつつある。このような背景もあり、ロシアのエネルギー政策は明らかに東方シフトを始めた。

 9月8、9日、ウラジオストクでAPEC首脳会議が開かれるが、これを機に、ロシアの極東開発が加速する可能性は高い。

 東シベリアの油田から中露国境スコボロジノまでの石油パイプラインは2009年に完成し、すでに中国大慶向けに原油が輸出されている。加えて、スコボロジノから極東沿岸ナホトカ・コズミノ港までをつなげた「東アジア太平洋石油パイプライン(ESPO)全長4700km、輸送能力年間5000万トン」もすでに完成し、本年11月には本格稼動の予定である。また同時にコズミノの原油積み出し施設の拡張工事も終えており、現在、年間3000万トンの輸出能力を有する。

 一方、サハリンから、ハバロフスク経由ウラジオストクまでの天然ガスパイプライン1800kmも2011年9月に完成、当面は、ウラジオストクでの発電所などエネルギー供給に使われるようである。ハバロフスクから東シベリアのガス田チャヤンダまでのパイプライン延長工事も間もなく始まる予定である。

 2018年までには、ウラジオストクでLNG製造プラントを稼動する計画があり、

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