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大手邦銀の海外業務、今度こそ成功するか?

根本直子

根本直子 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

 7月に発表された2012年度第1四半期の決算をみると、大手銀行の国内での貸し出しは伸び悩む一方、海外での貸し出しは順調に増加している。国内市場の成熟化と、貸し出し利ざやの低下に対応して、メガバンクは海外、特にアジア市場で収益を伸ばそうとしており、人員や資本を投入している。

 例えば、三菱UFJフィナンシャルグループは、2015年3月期にアジアからの粗利益を2011年度比50%増加させることを目指している。

 一方で、過去の歴史をみると、邦銀は90年代のアジア危機や、2008年のサブプライム危機に際して多額の損失を出し、拡大と撤退を繰り返してきた。海外市場の比重を増やすことは本当に得策なのだろうか?

 筆者は邦銀が海外事業を強化させることは、顧客へのサービス向上という意味でも、また銀行の収益性や成長性を高める上でもプラスと考える。ただし新たな地域での事業拡大にはリスクを伴うため、審査力の向上、ローカルなスタッフの活用、調達の安定化をさらに進める必要がある。

 メガバンクの海外での与信額は全体の18%程度であり、欧米の大手銀行(20-70%)との比較では依然少ない。信用リスクをみると、海外での延滞やデフォルト債権の比率は国内より低い。貸し出しの3-4割は日系企業向けであり、非日系企業も信用リスクの高い企業が大半であることから、資産の質は比較的良好といえる。

 しかし、新たな地域、特に新興国での業務拡大に際しては、多様な情報収集力、審査力の強化が必要となる。

 例えば、邦銀は資源や電力開発などのプロジェクト・ファイナンスで上位を占めているが、

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