根本直子
2012年08月27日
7月に発表された2012年度第1四半期の決算をみると、大手銀行の国内での貸し出しは伸び悩む一方、海外での貸し出しは順調に増加している。国内市場の成熟化と、貸し出し利ざやの低下に対応して、メガバンクは海外、特にアジア市場で収益を伸ばそうとしており、人員や資本を投入している。
例えば、三菱UFJフィナンシャルグループは、2015年3月期にアジアからの粗利益を2011年度比50%増加させることを目指している。
一方で、過去の歴史をみると、邦銀は90年代のアジア危機や、2008年のサブプライム危機に際して多額の損失を出し、拡大と撤退を繰り返してきた。海外市場の比重を増やすことは本当に得策なのだろうか?
筆者は邦銀が海外事業を強化させることは、顧客へのサービス向上という意味でも、また銀行の収益性や成長性を高める上でもプラスと考える。ただし新たな地域での事業拡大にはリスクを伴うため、審査力の向上、ローカルなスタッフの活用、調達の安定化をさらに進める必要がある。
メガバンクの海外での与信額は全体の18%程度であり、欧米の大手銀行(20-70%)との比較では依然少ない。信用リスクをみると、海外での延滞やデフォルト債権の比率は国内より低い。貸し出しの3-4割は日系企業向けであり、非日系企業も信用リスクの高い企業が大半であることから、資産の質は比較的良好といえる。
しかし、新たな地域、特に新興国での業務拡大に際しては、多様な情報収集力、審査力の強化が必要となる。
例えば、邦銀は資源や電力開発などのプロジェクト・ファイナンスで上位を占めているが、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください