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企業の農業参入、なぜうまくいかないか?

青山浩子 農業ジャーナリスト

 農家の高齢化、後継者不足が進むなか、新たな担い手として企業の農業参入に期待が高まっている。だが実際に参入した企業の多くが経営面で苦労している。担い手不足で、空き農地が増えている日本の農業。チャンスが目の前にあるのになぜうまくいかないのか。

 日本政策金融公庫が2012年1月に公表した「企業の農業参入に関する調査結果」(138社が回答)によると参入後、見込んた期間内に黒字転換できた企業は建設業で10%、食品製造業で18%にとどまっている。黒字化を達成するまでの期間も当初の計画からずれている。建設業が平均3.8年としていたが実際には4.1年、食品製造業は4.2年が4.6年。企業が新規事業に着手し、黒字化までに3年を見込むのが一般的といわれるなか、農業は企業にとってハードルが高いビジネスであることは間違いない。

 農業に参入する企業は大きく2つに別れる。ひとつは、食品製造業や食品流通業など農産物の取り扱いに長けており、出口も持っている企業。もうひとつは、農家出身の社員を多く抱えるなど“即戦力”を持っている建設・土木関係の企業だ。いずれも自社の強みをいかしての参入のはずだが、計画通りにはいかないという。

 参入企業の受け入れに積極的で、農地あっせんなど支援もする県の担当者は「技術力ゼロの状態で始めるため、計画通りに生産数量を確保できないことが大きい。そのわりに大規模な農場を確保するなど大きな青写真を描いてしまう。企業の場合、反収の高い野菜で参入するケースが多いが、野菜は保存が効かず、収穫量も変動する。これらを熟知した上で売りさばくノウハウがなければロスが増えるだけ」と手厳しい。

 ここまで読んで、疑問を抱く人はいないだろうか。「農業特有の事情は最初から織り込み済みで参入するはず。農業生産そのものの経験はなくとも、計画立案やその遂行など企業であれば豊富なノウハウがあるだろう。なぜそういう企業経営の経験がいかされないのか」と。

 取材をしてみると、参入企業が容易に黒字化できない事情を抱えていることも垣間見えてくる。

 新規事業として農業に参入する企業は、専任のスタッフを新たに雇ったり、機械や施設を購入したりと初期投資がかかる。さらに効率を考え、一カ所にまとまった農地を確保しようとする。

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筆者

青山浩子

青山浩子(あおやま・ひろこ) 農業ジャーナリスト

1963年愛知県生まれ。86年京都外国語大学英米語学科卒業。JTB勤務を経て、90年から1年間、韓国延世大学に留学。帰国後、韓国系商社であるハンファジャパン、船井総合研究所に勤務。99年より農業関係のジャーナリストとして活動中。1年の半分を農村での取材にあて、奮闘する農家の姿を紹介している。農業関連の月刊誌、新聞などに連載。著書に「強い農業をつくる」「『農』が変える食ビジネス」(日本経済新聞出版社)「農産物のダイレクト販売」(共著、ベネット)などがある。茨城大学農学部非常勤講師もつとめる。

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