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ピークを過ぎた日本の個人消費を直視せよ

中口威 内外情勢アナリスト

 エコカー補助金の終了などで秋以降の低迷が懸念されている国内の個人消費。問題の根源はかなり深そうで、いま少し掘り下げて詳しく観察して見る必要がある。

均衡が崩れつつある当面の個人消費

 まず本年秋以降、2013年にかけての日本の個人消費をめぐるさまざまな動きについて整理してみたい。

 前述のように、エコカー補助金は9月中には終了する。終了間際の駆け込み需要が期待されたが、これは盛り上がらず、国内の乗用車需要もほぼ飽和した感がある。昨年の家電エコポイントと地上波ディジタル放送への切り替えなどで需要を大きく先取りした、薄型テレビをはじめとする家電の販売はとうぶん上向きそうにない。

 9月1日から東京電力の電力料金が引き上げられ、家計の圧迫要因となっている。ただ本件がメディアで大きく取り上げられたため目立っていないが、電力料金はすでに、原発稼動停止と火力発電へのシフトを背景とするLNG価格の上昇などを反映して、国内の多くの電力会社で徐々に引き上げられている。

 10月からは、米国の旱魃などによる穀物価格の上昇を背景に、政府の小麦売渡価格が引き上げられ、また大豆やとうもろこしの輸入価格も上昇することから、国内の食料品価格の上昇が懸念されている。

 復興支援・住宅エコポイントは7月に締め切られ、金融面からの支援策であった「フラット35S」も間もなく終了する。ただ住宅については、おりからの史上稀なる低金利と2014年4月の消費税率引き上げへの駆け込み需要が住宅販売を押し上げる可能性がある。しかしながら、これで団塊ジュニアの住宅手当もほぼ完了し、2014年度以降の反動減が懸念される。

 企業を取り巻く経営環境は相変わらず厳しく、人件費抑制も続けられる模様で、本年12月の賞与も多くを期待できそうにない。株価も低迷したままでなかなか9000円への大台をクリアできない。そして2013年からは、復興財源としての増税も始まる。

 短期的な効果ではあるが、プラス要因として考慮しておかなければならないのは、政府が秋の臨時国会で成立を図ろうとしている2012年度補正予算である。その内容はまだ公にされてはいないが、近いうちとされる総選挙を意識して、財政逼迫にも拘わらず大判振舞いをする可能性がある。

 こうして見ると、当面の個人消費を取り巻く環境にはおしなべてネガティブな要素が多く、

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