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【政策男子部】政策がつくる未来 「決める政治」と「決めるビジネス」~プロデューサー人材で価値をつくる~

政策男子部部長 間中健介

 「決める政治」という言葉があえて語られるほど、現在の政治は混迷している。街に出ればまた、青息吐息の経済のもと、私たちの周りには「決められないカイシャ」や「決められない社長」もたくさんいる。そして、不都合な真実だが「決められない自分」がいるのも事実だ。9月12日には新政党「日本維新の会」が誕生した。21日には民主党代表選、26日には自由民主党の総裁選が行なわれ、国政をめぐる環境には変化が見込まれる。どのような環境になろうとも経済に責任を果たせる政治であって欲しい。

立会演説会を終え握手する(左から)野田佳彦、赤松広隆、原口一博、鹿野道彦の民主党代表選候補者=2012年9月13日午後、大阪市天王寺区、竹花徹朗撮影

 そんな政治の季節のなか、今回は政府が示した「共創の国づくり」についてまとめてみた。

「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」と「日本再生戦略」

 「康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」

 ロンドンオリンピックが閉幕して1ヵ月以上が過ぎたが、競泳男子400mメドレーリレーで銀メダルを獲得した選手たちのコメントの輝きはいまだに色あせない。ブレンダン・ハンセン選手(米国)に先着した第1泳者の入江陵介さんを含む3名が冒頭の思いのもとトップ争いを繰り広げ、「(北島)康介さん」は3名の後輩の思いをつないだ。4名が能力を最大限に発揮し、一緒になったことで銀メダルという新たな価値が創られた。

 政府が7月31日に閣議決定した日本再生戦略では、高尚な表現を織り交ぜて「共創の国づくり」の必要性を唱えている。共創とはまさに競泳男子メドレーリレーの4名が成し得たように「みんなで能力や資源を最大限に発揮し、一緒になって新たな価値を創る」ことであり、政府に言われるまでもなく、世の中の誰もが取り組んでいることである。

 企業同志がM&Aや事業提携でエコ住宅を開発するなりエコカーを市場投入するというものもあれば、中小機械メーカーがデザイナーと共同してフォルムの美しい製品を開発するというものもある。ビジネスの領域に限らず、自治体内で職員同士が知恵を出し合って新規の中小企業支援策を発案するというのも共創である。筆者は最近、単独では行動が出来ない下肢障害者と視覚障害者が互いの持ち味を発揮し、「下肢障害者が視覚障害者に方向を指示し、視覚障害者が車いすを推進する」という共創を目にした。

 では、企業や家計にこの共創の意識をさらに広げ、富を生むための共創が推進されるために、何をしていけばよいのであろうか。

“自由闊達”と“愉快” 

 共創を考えるにあたり、ソニーの元幹部に改めて話を聞いた。最近の同社の業績は心配だが、同社は新しい価値を次々と示して高収益を上げてきた企業であり、共創について何か答えをもっていそうな感じがしたからである。

 元幹部は、近年のソニーの業績低迷に対して嘆きつつ、次のように続けた。

 「井深さん(井深大・創業者)は“自由闊達”と“愉快”という2つの言葉をよく発していた。この2つによってソニーでは自然と社内外で共創が促され、いくつかのフロンティアを開拓してきた。ソニーは終わったという人たちもいるが、エンターテインメント、銀行、保険の領域で“新しい時代を創る力”は脈々と続いており、これらはそれぞれのマーケットで一定の評価を得て成長している。いまのアップルのような勢いを必ず取り戻す」

 2011年度のソニーは、連結売上高が4年連続の減収で6兆5,000億円を割り込み、673億円の営業赤字に転落した。なかでもテレビやパソコン等のCPS(コンスーマープロダクツ&サービス)分野が実に2,300億円近い営業赤字となっており、他事業の黒字を食い潰している。

 逆に言えば、映画、音楽、金融等のサービス領域は多少の浮き沈みはあれども着実に育っており、次なる成長の芽も複数ありそうである。厳しい業績のなか設備投資も研究開発投資も増額している。レディー・ガガとの契約を含め、75万件以上の音楽著作権等の所有・管理をしている。ソニー生命では約30年前の創業時から共創を理念で明示し、営業の現場で実践している。

 現在曲がり角にあるテレビやパソコンの事業でも、確かに単体の製品としてでなく、デザイン性に優れ、家庭のなかでの製品の役割を踏まえた商品提案を行ない、需要をつくってきた。そこにはアーティストやクリエイターとの共創であり、小売事業者との共創であり、お客様との共創があった。

 そうした様々な共創を支えたのが、

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