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JAL株売却益3000億円はどこへいく?

大鹿靖明 ジャーナリスト・ノンフィクション作家(朝日新聞編集委員)

 会社更生法の適用の申請を受けて経営破綻した日本航空(JAL)が9月19日、上場廃止から2年7カ月ぶりに東京証券取引所第1部に再上場した。世界の株式市場では米フェイスブックに次ぐといわれる大型上場で、証券界には久々に明るい話題だが、一番ご満悦なのは投資に成功した企業再生支援機構だろう。なにせJALに投じた資金が約2年あまりで約2倍になったのだから。

 JALは会社更生法の適用の申し立てと同時に、官製ファンドの企業再生支援機構(以下、支援機構)の支援を受けることが決まった。JALはこのとき上場を廃止し、100%減資したため、それまでのJALの株主は大損を被った。既存の株主に代わって支援機構がJALの(このときは)唯一の株主となり、JAL株を1株2000円で1億7500万株取得し、経営権を掌握した。投じた資金は、2000円×1億7500万株イコール3500億円だった。

 2000円で買ったJAL株を今回の再上場にあたって1株3790円で売り出したため、引受証券会社の手数料などを引いても、支援機構に入ったお金はざっと6000億円になる。初期投資した3500億円は市中銀行から借り入れて調達したので、利子をつけて銀行に返済した後も、支援機構には3000億円の売却益が残る計算になる。

 この潤沢な資金をめぐって政府内では早くも駆け引きが始まっている。安住淳財務相は早くも「震災からの復興資金に充てたい」と発言している。震災復興を名目に財務省が支援機構から徴収し、各省に復興財源としてばらまくという算段である。

 支援機構の瀬谷俊雄社長は、そうした発言を受けて、「(支援機構には)携わる役所もいくつかある。震災復興に使いたいという呼び声もあるが、円滑化法の問題もある」と19日の上場記者会見で言及した。これは、財務省に限らず、中小企業金融円滑化法を所管している金融庁も狙っていることを示唆した発言だ。

 支援機構の元幹部によると、支援機構のスタッフや支援機構を所管する内閣府は、このJAL再上場の成功を花道に支援機構の業務を終息させたかったのに、実は、そうならないで組織の延命が決まっている。支援機構の元幹部は「金融庁が、亀井さんのつくった中小企業金融円滑化法を意識して、横車を押してきたのです」と打ち明ける。

 そもそも支援機構法は、再生しなければならない企業を支援機構が支援するかどうかを決める期間を2年間と定めていた。2009年10月に発足した支援機構は、この規定に従えば、その2年後の11年10月までしか問題企業を受け入れるかどうかを決められない。ただし、所管大臣から特別の認可を受ければ半年間の延長が可能で、そうすると12年3月までが支援決定期間だった。

 ところが、

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