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日本の公的教育支出は足りないのか

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 経済協力開発機構(OECD)が、日本の公的教育支出のGDPに占める比は比較できるデータのある加盟31カ国中最低で、日本の教員の初任給も低いと、ほとんどの新聞で報道されていた(201年9月12日各紙)。

 たしかに、表に見るように、日本の公的教育支出の対GDP比 3.6%に対して、アメリカ、イギリスともに5.3%、フランス5.8%、ドイツ4.5%だから低いのは確かである(これらの数字は2009年のものなので10年の高校授業料無償化の効果は含んでいない)。報道であるから、だからどうしろと書いてある訳ではないが、日本も公的教育支出を増やすべきではないかかというニュアンスが含まれていたと思う(これらの報道は「OECDインディケータ 図表でみる教育:2012カントリーノート(2012年9月11日)」に基づく。本稿の数字もこれに基づく)。

日本は税金も低く、子どもも少ない

 しかし、日本の税・社会保険料負担も、OECD加盟国の中で最低である。だから、教育であれ他の支出であれ、支出面で最低であるのは当然である。その中で、OECD加盟国の中より高くしようとすれば、他の支出が減るか、財政赤字が増えるかどちらかになる。日本の財政赤字が大きいのは、日本の税・社会保険料負担がOECD加盟国の中で最低なのに、OECD加盟国なみの社会保障を維持しているからである。

 このことはの税・社会保障負担の対国民所得比を見ることで明らかである。日本の税・社会保障負担の対国民所得比は38.3%で表の中では韓国、アメリカに次いで低い。イギリスは45.8%、フランスは60.1%、ドイツは53.2%である。日本の公的教育費をフランスなみにするには、負担の方もフランスなみにしなければ財政赤字が増えるばかりとなる。

 

 さらに、少子化によって、日本は子どもの数も少ない。したがって、在学者一人あたりの教育支出にすると日本の公的支出は低くない。2009 年において、日本の初等教育から高等教育段階までの在学者一人当たり年間教育支出は10,035米ドルであり、OECD平均の9,252米ドルを上回る。これはイギリス、フランス、ドイツなみである(カントリーノートTable B1.1a)。

日本の教員給与は本当に低いのか

 もっと不思議なのは、

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