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 9月22日の英エコノミスト誌のタイトルは、「中国と日本はこの島をめぐって本当に戦争をするのか?」だった。そのシナリオは仮想に過ぎないとはいえ、海外の投資家の中には、2~3割の確率で軍事的衝突が生じる、という見方すらあるようだ。

 筆者は政治の専門家ではないので、今後の展開を予測はできないが、いくつかのリスクシナリオに沿って経済的な影響をみてみたい。

 日中外交関係の悪化は、円高や世界景気減速により利益が下押し圧力を受けている日本企業にとって、新たな重荷となっている。

 反日デモは一時より落ち着いているが、日本製品の不買運動や、日系企業の工場や店舗の操業・営業の一部停止、両国間の渡航の減少などは続いている。日本の上場企業について、中国市場での売上のシェアは平均6%程度に上る。相対的に影響を受けやすいセクターは、中国市場での売り上げや中国向けの輸出(間接的な輸出を含む)のウエートが比較的大きい自動車、鉄鋼、家電などである。

 ベースケースとしては、政治的決着が長引くとしても、経済制裁や中国への輸出規制などのドラスチックな手段は回避されると仮定する。その場合、中国で事業を営む企業の売上は減少するが、事業構造改革や、他の地域での業績回復で、ある程度吸収できる。 

 家電などの民生エレクトロニクス部門ではテレビ事業の採算悪化等から収益が低迷しているのに加え、上位企業では連結売上高に占める中国の比重も8~14%程度と無視できない規模になっている。また自動車では中国での販売額が全体の10~15%と相対的に高い。鉄鋼については直接の影響は少ないが、自動車メーカーなどの日本企業の生産が落ち込んだ場合には、間接的な影響が生じうる。

 今回店舗が破壊された、スーパーなどの小売では、売上に占める中国の比率は2%以下とさほど高くはないが、潜在的な成長性からみて、中国は重要な市場である。

 一方、ベースケースではないが、仮に経済制裁などの措置が取られ、中国での大幅な生産削減や中国向け輸出の減少が1年以上に及ぶことを想定した場合、特定の企業だけではなく、より広範囲なセクターで業績が悪影響を受けるだろう。

 日本にとって中国は最大の輸出相手国であり、

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筆者

根本直子

根本直子(ねもと・なおこ) 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

日本銀行、S&Pグローバル、マネージング・ディレクターを経て現職。主なリサーチ分野は、金融機関経営、日本およびアジアの金融市場、包摂的成長。 早稲田大学法学部、シカゴ大学経営大学院、一橋大学商学研究科、商学(博士) 主な著書に「韓国モデルー金融再生の鍵」「残る銀行沈む銀行―金融危機後の構図」 財務省 関税・外国為替等審議会委員、中部電力、コンコルディア・フィナンシャルグループ社外取締役、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 経営管理委員。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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