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 日本では、TPP交渉に参加するのか、しないのか、について、未だに議論されている。しかし、肝心のTPP交渉がどうなっているかについては、菅元首相がTPP参加を取り上げて以来、連日TPPについて欠かさず報道している日本農業新聞を含めて、ほとんど報道されることはない。入手できる情報によって、TPP交渉の現状を分析・解説しよう。その際、TPPに反対する評論家や政治家が昨年来行ってきた主張とTPP交渉の現状を対比してみたい。

 まず、交渉全体のスケジュールである。日本のTPP反対派は、オバマ米大統領が2012年中の妥結を目指すと述べていたことから、交渉は2012年にまとまるのであり、今参加しても貿易や投資のルール策定に日本は参加できないと、主張していた。

 これに対して、私は、いくらオバマが主張しても、アメリカは、国営企業や医薬品がらみの知的財産権問題など、自国の提案内容についても、細部を詰め切れていないし、これから他の交渉参加国と交渉するのだから、2012年中の妥結はあり得ないと反論してきた。砂糖、乳製品、繊維の関税をどうするかなどアメリカが痛みを伴うマーケット・アクセスの交渉は、未だに、ほとんど進んでいない。2012年は大統領選挙の年なので、アメリカの政権が選挙に不利な内容を伴う交渉を妥結できるはずがない。これが、ワシントンの通商交渉通や米議会関係者たちの一致した見方だった。

 現状は、私が主張したとおりの展開となっている。交渉が進むにつれて、簡単に合意できるものから、各国が互いに譲れない部分に交渉の焦点が移っている。これには時間がかかる。2012年中どころか、2013年においても妥結できるかどうか疑問視されている状況である。

 日本のTPP反対派は、アメリカの主張が簡単に通ると、当たり前のように考えていた。アメリカは強いので、日本が参加してもいいように食いつぶされるだけだという、「アメリカ怖い、日本は引き籠れ」式の議論を多くの人が信じた。交渉の現状は逆である。アメリカは、重要な分野で孤立している。例えば、 ・・・ログインして読む
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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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