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「リフレ派」へと変身した?IMF

吉松崇 経済金融アナリスト

 48年振りに日本で開催されたIMF・世銀総会が、10月14日、閉幕した。この会議を通じての、IMFから世界各国の経済政策に対するメッセージは明確だ。それは、一言でいって、「財政再建を急ぐな!!」というものだ。

 ラガルド専務理事は、「ギリシャは、財政緊縮策の実施に、2年間の猶予を与えられるべきだ」と述べ、更に、すべての国に対し、「経済が予想以上に悪化しているときに、新たな財政緊縮策をとるべきではない」とクギを刺した。一方で、FRB(米連邦準備理事会)による、QE3(量的緩和第3弾)と、ECB(欧州中央銀行)による南欧諸国の国債の購入という決定を高く評価して、日銀に対しては、「更なる金融緩和」を求めた。

世界経済のリスクは「財政の崖」とユーロ圏の悪循環

 総会冒頭の10月9日、IMFは「世界経済見通し(”World Economic Outlook”)」を発表した。この中でIMFは、世界全体の経済成長率(実質GDP成長率)の予想を2012年3.3%、2013年3.6%と、今年7月時点の予想から、各々、0.2%と0.3%引き下げている。尚、過去の実績値は、2010年5.1%、2011年3.8%の成長だから、この3年間、世界の経済成長が少しずつ弱まっているのが分かる。

 それでは、2013年に3.6%の経済成長が本当に達成できるのだろうか? 残念ながら、目の前に大きなリスクが存在する。一つは、米国のいわゆる「財政の崖(”fiscal cliff”)である。米国議会(上下両院)が、何も手を打たないと、時限性のある減税や財政支出の特別措置が、12月末で期限切れとなる。このインパクトは、GDPの約4%と推定されている。つまり、自動的に発生する財政緊縮で、アメリカは景気後退(マイナスの成長率)に突入することになるだろう。もう一つは、ユーロ圏の財政緊縮と金融危機の悪循環が止まらないことである。

 IMFは、このようなリスクが顕在化すると、世界全体の経済成長率は2%を割り込む、という。2013年の3.6%成長の内訳は、先進国1.5%、発展途上国5.6%、であるが、このうち、先進国全体でマイナス成長になる、というのが、リスク・シナリオである(IMFは、これが顕在化する確率を、約10%、と置いている)。

 つまり、IMFのメッセージは、主として、米国とユーロ圏に向けられており、米国に対しては、「早く、超党派で『財政の崖』に手を打て!」、ユーロ圏に対しては、「南欧諸国に、過大な緊縮財政を要求するのを、やめろ!」という事である。ラガルド専務理事は、EU当局に対し、「救済基金やECBの国債買入れ計画を早く活用すべきだ」とも述べている。

 興味深いのは、ラガルド専務理事の一連の発言に呼応するかのように、 ・・・ログインして読む
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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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