2012年10月19日
■世界経済さらなる減速への懸念
10月9日から14日まで、1964年9月以来48年ぶりに東京で開催されたIMF・世銀総会が終了した。一連の会合において、多岐にわたるテーマが議論されたが、13日に開催されたIMFの諮問機関である「国際通貨金融委員会(IMFC)」の共同声明に今回の議論の大筋が集約されている。
同共同声明によれば、欧州の財政・金融危機、米国の財政の崖、新興国の成長減速などを背景とする、世界経済のさらなる減速への懸念が共有されたようである。また、その対応策について、財政緊縮策のみならず経済成長との両立を図るという指針を打ち出したが、残念ながら具体性には乏しく、その実現への道のりは平坦ではなさそうである。
■狭くて険しい失速回避への道筋
現在の世界経済同時低迷の震源地は、「欧州の財政と金融の複合危機」であり、これを沈静化させることなく、世界経済失速への危機を回避することは難しい。しかしながら、欧州の混乱の根は深く、その収拾への道筋は狭くてかつ想像以上に険しいものになりそうである。
欧州では、現在スペインおよびギリシャ支援問題への対応が喫緊の課題である。スペインは10年債の金利が一時7.7%に達し、単独で資金調達をするのが困難なレベルと言われる7%を大きく上回った。その後9月初めにECB(欧州中央銀行)が、残存期間1~3年の南欧国債の無制限買い取りの意向を表明したことにより、金利は6%を上下するレベルまで低下している(10月16日現在5.8%)。
ECBが国債買い取りの条件としたユーロ圏による支援の実施母体であるESM(欧州安定メカニズム)も10月8日に発足している。しかしながら、スペイン政府は、ユーロ圏による支援実施の際に課せられる緊縮財政への国民の反発を危惧しており、正式な支援を要請するまでにはいま少し時間がかかりそうである。
また、スペイン政府が求めているESMによる銀行への直接資金投入については、その前提であるECBによる銀行の一元管理への移行が、当初目指していた2013年1月より段階的に進められる方向で調整が進んでいる。
ギリシャでも、1300億ユーロの第2次支援策決定の際の条件であった、2014年までの、GDP比財政赤字3%への圧縮ならびに115億ユーロの財政支出削減計画の2年繰り延べを巡って、支援母体であるEU・ECB・IMFのトロイカとの調整が難航している。そしてここでも、公務員給与や年金削減などを中心とする財政緊縮策へのギリシャ国民の反発が強く、首都アテネなどで、大規模なデモやストライキが頻発している。
ユーロ導入以降の低金利を利用して、返済能力を遥かに上回る国債を発行し、国家債務を大きく膨張させたことが今般の危機の根源ゆえ、南欧諸国が、財政緊縮計画を断行して債務の圧縮を図らない限り、本質的な解決には向かわない。
それゆえ当分の間、
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