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日銀総裁人事と安倍自民党が抱えるリスク

木代泰之

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 「首相は解散と公定歩合はウソを言ってもいい」というのが、自民党政権時代の永田町のルールだった。自分が作ったルールなど素知らぬ顔で、野田政権を「ウソつき」と呼んで虚しく攻める自民党の姿は、どこか滑稽だ。自民、公明党がいくら攻めても、民主党はいま総選挙をやれば確実に負けるので解散に応じるつもりはない。攻防の舞台は29日からの臨時国会に移る。

 自民党の総選挙に向けたマニュアルはかなり出来上がっていて、発表のタイミングを待っている。ここでは安倍晋三総裁の下での経済政策を中心に4点検討してみたい。気がつくのは、どれも大きなリスクを伴っていることだ。

 一つ目は日銀の金融政策だ。

 焦点は来年4月に任期が切れる白川方明・日銀総裁の後任問題になる。安部氏は「デフレ脱却のために思い切った量的緩和を行うべきで、日銀の対応は不十分。日銀法の改正も考える」と発言している。

 安倍氏はいわゆる「リフレ派()」とされ、安倍氏周辺にはこの考え方の人が多い。日銀法改正は、中央銀行の使命として、従来の「物価安定」に加え「雇用の最大化」を盛り込み、政府に総裁らの解任権まで与えようという内容。

 要するに「デフレ脱却や円高是正ができない日銀に金融政策は任せておけない」とする日銀バッシングである。そこで次期総裁には金融緩和論者を起用せよという話になるが、政治的な要素がからむので、そう簡単ではない。

 日銀総裁は国会同意人事(衆参両院の本会議での同意が必要)であり、その時の政治状況によって賛否は流動的になる。5年前、当時の自民党政権が出した二つの総裁人事案(武藤敏郎氏と田波耕治氏=ともに財務省出身)は参議院で不同意となり、結局、日銀出身で京都大学教授だった白川氏が就任した。

 民主党政権がこのまま続く場合、総裁人事案は衆議院を通っても、野党が多数を占める参議院では、前回の意趣返しで不同意になる可能性がある。時期が来年度予算審議と重なるので、各党の駆け引き次第で政争の具になりかねない。

 逆にもし総選挙が行われて安倍自民党が勝った場合は、人事案は衆議院を自公(たぶん+維新)の賛成で通るだろうが、いまの参議院は自公だけでは過半数に達しない。この場合もねじれが波乱要素になる。

 今の円高やデフレは根が深い。企業の投資は国内より海外で行われ、賃金減少や高齢化で国内需要は伸びない。貿易収支は赤字でも所得収支は黒字で、企業の内部留保には余裕がある。いくら金融緩和をしても、カネは銀行から先にあまり流れない。

 デフレ脱却の政策手段には限界があるので、いずれ民主党にも賛成が多い日銀法改正が現実味を帯びてくるだろう。しかし、法改正によって中央銀行の政策が政府の意のままに動くような印象を世界に与えれば、通貨の信用は貶められる。安倍氏もそのリスクを知っておくべきだろう。

 二つ目は、米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)への参加問題だ。

 安倍氏は「聖域なき関税撤廃など、国益に反する形での参加には反対」と言うだけで、真意が分かりにくい。国益に反するなら参加しない(国益があるなら参加する)――ごく当たり前のこと言い、わざと黒白をはっきりさせない作戦だという。

 自民党の選挙基盤である農協と医師会は、 ・・・ログインして読む
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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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