2012年11月01日
筆者が、『米国のバブル崩壊に備えよ』と題して、印刷版の月刊誌時代の『論座』(1998年7月号)に寄稿したのは、1998年(平成10年)6月のことであった。ニューヨーク株式市場での大暴落に端を発して世界的な同時株価暴落が始まる1年半余り前のことであった。その後には、1990年代の米国経済の長期大好況が一変して大不況になり、その道連れで、世界同時大不況が到来する危険が迫っていたと、少なくとも筆者には、考えられたからであった。
しかし、米国、欧州、日本などの先進経済地域の政策当局が共同して取った政策は、結果的には、株価などの資産価格バブルを再度膨らませることであった。それも、2007年後半以降には崩れ、その次の資産価格バブルの再膨張も、昨年(2011年)後半以降は、いつ崩れても不思議ではない状況にあるのが、最近の姿と言えよう。
最近10年余りの期間を振り返って見れば、米国の株式相場は、3度もの大きな振幅を経ながらも、結果的には長期低迷した状態にあったと評価されよう。それに連動して、米国経済、特に、その労働市場は、『失われた十年』とも呼ぶべき長期低迷を、これからではなく、既に経験してしまったのが実状と言えよう。
ここで留意しなければならないのは、株式、債券などの金融資産は、それ自体に価値がある訳ではなく、国民経済が生み出したGDP(国内総生産=国内総所得=国内総支出)も分配する約束事(契約)に過ぎないということである。換言すれば、株式、債券などの金融資産の価格は、GDPの動向と無関係に動いているのではなく、非常に密接に相関している訳である。
1980年第1四半期を基準の100.0として、米国のGDP、株価指数(S%P500、四半期中平均)を指数化してみよう。
2012年第3四半期には、GDPは579.1、株価指数は1278.8となっている。
GDPは、約5.7倍、株価指数は実に約12.8倍にも膨れ上がっているわけである。ちなみに、物価水準の変化を割り引いた実質GDPは、230.7と、約2.3倍にしかなっていない。
1980年第1四半期のS&P株価指数の実際の期中平均は110.24であった。
これが、GDPと全く等倍の上昇しか見なかったとすると、
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