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地方商店街、「家業を継ぐ」は死語になるのか

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 地方の商店街が長い不振に苦しんでいる。最近、JR小田原駅前にある専門店ビルが来年3月で営業を終えるというニュースがあった。小田原市にはかつて百貨店がこのビルを含めて3店あったが、これでゼロになる。

 筆者の故郷である鳥取市も、メインストリートから脇道に入ればシャッター街だ。市内には駅前を中心に9つの商店街があるが、どこも人通りは寒々しい。雑居ビルも空室だらけ。大都会の街では分かりにくい不況の姿が、地方都市ではくっきり見える。

 不動産業者に聞くと「空き店舗には買い手も借り手もつかない」と言う。後継者も新規創業者もいないのでシャッターが増え、客足が遠のく。それでまたシャッターが増える、という繰り返し。

 テナントを集めた施設の建設や、花作りコンテストなど努力はしているのだが、売上は毎年4~5%ずつ減っている。10年で半減する計算だ。高校の同級生には商店街の子どもがたくさんいたが、家業を継ぐことに早々と見切りをつけた者が多い。

 全国でも、30年前に172万軒あった商店は今114万軒で、3分の2に減った。洋品店、雑貨店、電気店、菓子屋、文具店、映画館などが消滅し、減少ペースは衰えていない。「家業を継ぐ」という、かつて当り前だった行為が日本中から消えつつある。それによって雇用も200万人程度は減ったと思われる。

 しかし、商業全体でみると、大規模スーパーやコンビニ、飲食チェーン店などの大資本が雇用を増やし、同じ期間に600万人から800万人超へ200万人以上増えている。昔なら、地元の学校を出て商店経営者になっていたはずの人たちのかなりの部分が、スーパーやコンビニ従業員として吸収されていると推測できる。

 商業の従業員のうち約60%は、契約社員・アルバイト・派遣社員といった非正規労働者が占める。イトーヨーカ堂クラスの大型スーパーだと80~90%になる。いったん非正規で働き始めると、そこから抜け出ることは難しい。ほどほど豊かだった商店経営者たちが低所得層に転じたことで、街の活力や消費力が衰えている。

 商店街が衰退した主な原因はふつう、大規模小売店の出店、マイカーの普及、道路網の整備などが上げられるが、それだけではない。地方人口の減少、リーマンショック後の不況、さらにネット販売の普及が追い打ちをかけている。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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