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拡大首相官邸を出る野田佳彦首相=2012年11月9日午後6時、仙波理撮影

 11月9日、各紙は野田首相がTPP参加の意向であることを一斉に報じた。朝日新聞は夕刊で次のように報じている。

 「首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に参加する意向を固めた。オバマ米大統領の再選を受け、日米関係を強める狙い。TPP参加に慎重な自民党との対立軸が鮮明になるとして衆院選での争点化を求める声も閣内にあり、首相は参加を表明したうえで、年内も含め解散時期を探る。ただ民主党内には反対論が根強く、離党者が続出する可能性もある」

 選挙のマニフェストにTPP推進と書けば、離党者が出る。選挙の前に、参加表明をしても、離党者が出て、内閣不信任案は可決され、選挙となる。しかし、野田首相にすると、選挙をすると腹をくくれば、内閣不信任案可決も怖くない。さらに、いまのままでは選挙で負けることは、民主党の誰もが思っている。民主党に残っている、山田正彦氏などのTPP反対派は消費税増税にも反対である。

 彼らを残したままでマニフェストを書こうとしても、選挙の大きな争点となる事項について、明確なことは書けない。どちらにもとれる玉虫色のマニフェストでは、選挙にならない。彼らを離党させたほうが、党としての主張ははっきりする。TPP反対派を残したままで選挙に望み、大幅な議席減となるよりも、彼らを切り捨てたほうが、議席の減少を最低限に抑えられるという読みなのだろう。

 野田首相では選挙に勝てないと危ぶむ向きも民主党内にあるだろう。しかし、内閣不信任案可決を受けて、野田内閣が総辞職を行い、後継首相に人気のある細野豪志氏を立てて、解散・総選挙を行えば、僅かな負けにとどまるか、ひょっとすると勝てるかもしれない。党内融和が必要ではなくなった以上、永田町の怪人と言われた輿石氏は退場する。

 しかも、本人たちが意図しているかどうかは別として、やり方によっては、これは巧妙な政治戦略となる。「早く選挙をやれ」と要求してきた自民党に玉を打ち返した形になったからだ。

 自民党の首脳たちは、本心ではTPP賛成であるが、党内に農協の支持を必要とする農林族がいるため、TPPについては曖昧な言い回しに終始してきた。年内または年始に解散となれば、 ・・・ログインして読む
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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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