原田泰
2012年11月12日
■政府と日銀の共同文書には奇妙なことが書いてある
政府及び日本銀行が、「我が国経済のデフレ脱却に向けて、(共同で)取り組む」とした文書(「デフレ脱却に向けた取組について」平成24年10月30日、日本銀行総裁白川方明、内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)前原誠司、財務大臣城島光力と名前が書いてある)は、デフレ脱却論者からも評価されているようだが、よく中身を見ると奇妙なことが書いてある。
まず、「1.政府及び日本銀行は、デフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であるとの認識を共有しており、一体となってこの課題の達成に最大限の努力を行う」とある。
「2.日本銀行としては、上記1.の課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しがあいまって実現されていくものであると認識しており、政府が成長力強化の取組を強力に推進することを強く期待する」とある。
「1.」の課題がデフレ脱却なのか、成長力強化なのか、どれが原因でどれが結果なのか判然としないが、いずれにせよ、「1.」、「2.」とも、デフレ脱却のために成長力強化が必要と考えているように読める。
しかし、デフレ脱却と成長力強化は関係がない。
日銀は、人口減少や成長力低下がデフレの原因とかいう説を盛んに流しているが、まったくの誤りである。
人口が増えれば需要も増えるだろうが、労働力が増えるのであるから供給も増える。人口が増えれば需要も供給も同時に増えるのだから、インフレになるかデフレになるかは分からない。人口が減るときも、成長率についても、同じである。
ギリシャ、スペイン、イタリアは成長力が低下しているが、物価上昇率は日本より高い。2011年の日本の消費者物価上昇率はマイナスだが、南欧3か国はいずれも3%前後である。
2012年の予測でも、日本がほとんどゼロなのに、他国は1~3%である。むしろ、成長力が落ちているからインフレになっているのであろう。社会に出回るお金の量に比べて、生産できる財サービスの量が減っているのだからインフレになるのが当然である。
この文書にはまた、
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください