森永卓郎
2012年11月13日
田中真紀子文科相が来年4月に開校予定の大学3校を突然不認可と発表した事件は、結局3大学を予定通り現行制度で認可したうえで、年内をめどに早急に新しい認可基準を詰めていくことで決着した。野田総理は、田中真紀子文部科学相について「(認可基準見直しという)方向感としては理解をいただける話だ。辞めさせるということはない」と話し、大臣を交代させる考えのないことを明らかにした。
野田総理の発言は任命責任を免れるためのものだろうが、総理以上に問題になのが、評論家たちのコメントだった、多くの評論家が野田総理と同様に、「田中大臣のやり方は暴力的でよくないが、言っていること自体は正しい」という評価をしたのだ。本当にそうだろうか。
今回の事件は、規制緩和によって一定の基準を満たせば大学設置が認可される大学設置基準を面白く思っていない財務省と文部科学省が、大臣在任期間中に名前を売っておきたい田中真紀子氏と共謀して演じた茶番なのではないだろうか。
ここのところ影が薄くなり、再選が覚束ない田中真紀子氏は、テレビに大量に露出することができた。財務省と文部科学省は、設置基準の早期見直しに大臣のお墨付きを得た。双方、万々歳だったのだ。ところが、大学の設置基準を今後厳格化することで、田中大臣が問題にした「大学の質の低下」は防げるのだろうか。私は、逆効果だと思う。
確かに、田中大臣の指摘するように、この20年ほどで、18歳人口が大きく減少したのに、大学の数は増えている。総務省の人口統計でみると、18歳人口は90年の203万人から今年の123万人まで39%減っている。これに対して大学の数は、90年の507校から今年の783校へと54%も増えているのだ。
ただ、学校数が増えるだけでなく、大学入学者数も、90年の49万人から今年の61万人へと、24%も増えている。大学への進学ニーズが高まり、進学率が大きく上昇したからだ。経済が発展すれば、高等教育へのニーズが高まるのは、当然のことだ。つまりこれまでの高等教育の拡大は、ニーズに裏付けられたものだったのだ。
しかも、重要なことは、
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