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起業家精神を意識しない学生たち

 授業の出席表代わりに、「以下の4つの質問から選んで回答しなさい」と原稿用紙を渡した。ある米国系企業が公開する大学新卒者向けの面接における質問事例から選んだものである。

  ・起業家精神の持ち主ですか。

  ・仕事でもっとも重要と考えるのはどんなことですか。

  ・リーダーシップを発揮した例を挙げてください。

  ・チームで取り組んだ事例を話してください。

  ・ビジネスで成功するには、どんな資質が必要だと思いますか。

 このうち、最も選択が多かったのは、「仕事で最も重要と考えるのはどんなことですか」(26人)で、「チームで取り組んだ事例を話してください」(14人)と「ビジネスで成功するには、どんな資質が必要だと思いますか」(12人)の順番になった。

 日本の学生には、「起業家精神の持ち主ですか」、「リーダーシップを発揮した例を挙げてください」(各4人)は難問なのだろう。とくに前者の質問に対しては、「会社員や公務員でも、変化へのチャレンジは必須である。デフレや人口減少社会では、イノベーション、創造性が不可欠」と補足した。「先生も、来年度から英語で授業をしてください」。この程度の変化は常に、予期していると問いかけた。なお、起業家精神に対する回答の多くはアジアの留学生である。

繁栄のフロンティア部会20ページの報告書

 さて、国家戦略会議のフロンティア分科会・繁栄のフロンティア部会(部会長:柳川範之・東京大学教授、部会長代理:武田洋子・三菱総合研究所 政策・経済研究センター主席研究員)が7月6日付けで、部会報告「未来を搾取する社会から、未来に投資する社会へ」をまとめた(http://www.npu.go.jp/policy/policy04/pdf/20120711/sanko_shiryo2.pdf)。合計7回の会合を経てまとめた本文20ページの報告書である。

 そのなかで、皆が75歳まで働くための「40歳定年制」(13ページ)に言及されている。まず、この報告書は、2050年の反映の姿という長期の戦略として作成されたものだ。メンバーに若手・中堅が目立つためか文体は読みやすい。この点では優れている。ただし、全体としては各論で新規性のある提案に乏しく、政策実施で重要な具体的な導入時期について言及がない。しかも、概念図や工程表はなく、添付図表は1枚だけである。

 それに比して、「社会保障の負担と給付」にかかわる部分などは具体的に書けている。「マイナンバー制度の早急な導入と適切な運用」(10ページ)、「生活保護費を適正化すべきである」(19ページ)、年金支給開始年齢は65歳であり、欧米諸国の67~68歳に比べて低い。<中略>年金支給開始年齢の引き上げを行うべきである」(19ページ)。本文最後の20ページは、「特別に1割負担に凍結されている70~74歳の医療費自己負担の適正化」で締められている。環太平洋パートナーシップ(TPP)も2050年の日本には組み込まれているように読める(18ページ)。全体としては官僚の作文の臭いを感じるのは筆者だけだろうか。報告書を要約すると、私が学生に対して起業家精神を問うたように、報告書は我々に自助努力を問いかけているように思える。

40歳定年制で地方に人材が供給されるのか

 しかしながら、定年制だけで論じるとどうなるだろうか。60歳から65歳に延長した定年制を、今度は、40歳に短縮してみませんか。わかりやすい。既存の制度を若干修正することに満足してしまう旧世代の石頭には、良い提案だろう。65歳への定年制の延長は、年金受給年齢の引き上げに伴う措置だった。

 定年40歳の提起は、 ・・・ログインして読む
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筆者

小原篤次

小原篤次(おはら・あつじ) 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

長崎県立大学国際情報学部准教授。1961年、大阪府堺市生まれ。同志社大学法学部卒、国立フィリピン大学修士。朝日新聞社、チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)、みずほセキュリティーズアジア初代株式調査部長、みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資調査部副部長を経て現職。【2015年12月WEBRONZA退任】

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