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防衛、建設・不動産、金融株が買いか―自民公約の中身

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 自民党が21日、衆議院選挙の公約を発表した。景気の先行指標である株式市場で考えると、防衛、建設・不動産、金融関連などの銘柄が買いというところだろう。もちろん、日銀法改正も辞さない金融緩和により、円高是正やデフレ脱却への期待が株式市場全般にある。総選挙後も上昇相場が続くようなら、日本経済は本格回復する可能性がある。そうなれば、ベンチャー企業の新規上場(IPO)も促進され、起業家を目指す若者に夢を与えるだろう。

憲法改正、教育改革以外に何をしたいのか

 「日本を、取り戻す」。政権復帰に向けた公約は54ページに及ぶ。12章立て、なんと328項目もの公約が、ぎっしり並べられている。これが学生のレポートなら厳しい指摘をする。「何を書きたいのか」「書き直しなさい」。選挙公約の脈絡で言えば、「何をしたいのか」になる。

 安倍総裁カラーが鮮明な憲法改正、教育政策に比べると、経済政策、福祉政策はどうしても色あせる。政策が羅列され、自民党政権時代の積み残しや中央省庁の意見を集約した印象を受ける。総花的に見えてしまうのが残念である。民主党との違いであれば、エネルギーや地方・地域再生、雇用、少子化対策あたりに絞った公約を見たかった。

来年度の歳出は、最大の支出項目である社会保障費はできるだけ弄らずに、その他項目を削り込み、復興財源やインフラ整備に重点配分し、そして自衛隊や海上保安庁の増額にも十分、配慮すると読める。

 「日米同盟の絆を強化し、中国、韓国、ロシアとの関係を改善する」。自民党公約では、集団的自衛権の行使を可能として、「国家安全保障基本法」を制定する。一方、再選されたオバマ政権は防衛費の削減を掲げており、日米関係強化で周辺諸国と対峙するという対外戦略においては、日本側の相当な負担が必要ということだろう。

防衛白書によると、自衛官は22万7848人。ちなみに自動車最大手トヨタ自動車の従業員数は海外子会社などを含めた連結ベースでは32万5905人に及ぶ。トヨタに及ばないとはいえ、国内の製造業で人員削減が続くなど雇用関係が流動化するなか、国土を守る自衛官の存在感を多方面で増すことだろう。

3%以上の名目成長

 経済ではチャレンジングな目標を掲げている。数値目標は、金融政策に2%のインフレターゲットを設けて、名目3%以上の経済成長を達成する。達成年次が明示されていないものの、極めて挑戦的な目標である。やや高過ぎて選挙後、実現しないことで有権者を失望させないか心配するほどである。

 短期間で目標を達成するには、

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