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アメリカ大統領選挙とマリファナ・同性婚の合法化を巡る住民投票

吉松崇

吉松崇 経済金融アナリスト

 アメリカ大統領選挙は、得票総数では大接戦であったが、現職のオバマ大統領が、激戦州の殆どを制して、圧勝した。

 大統領選挙の行われた11月6日には、大統領選挙に加え、連邦上下両院の選挙が行われたほか、殆どの州で地方選挙も行われている。この「11月の第1月曜日の次の火曜日」と連邦法で定められている「選挙の日」が、同時に、地方議員や行政首長の選挙、或いは様々な住民投票の日と重なっている。市民の便宜を考えて、多くの地方自治体が、この日に選挙の日程を合わせているからだ。

 2年前の中間選挙の折に、私は、たまたま、アメリカ人の友人の家に滞在していたので、選挙に連れて行ってもらった。ニューヨークに隣接するコネチカット州の町で、投票用紙を見せてもらうと、連邦議会(上院・下院)の選挙のほかに、州議会選挙、州の司法長官選挙、町長、町のトレジャラー(財務部長)、等々、10以上の選挙項目が並んでいた。投票所は、日本と同様、近所の公立学校である。投票について来た子供たちは、風船やお菓子をもらってはしゃいでいた。アメリカの選挙は、お祭りでもある。

 今年の「選挙の日」には、全米の注目を集めた二つの住民投票が、州レベルで行われた。ひとつは、「マリファナの合法化」の是非を問う住民投票であり、もうひとつは、「同性婚(same sex marriage)の合法化」の是非を問う住民投票である。

マリファナの合法化

 コロラド州、ワシントン州、オレゴン州で、マリファナ合法化の賛否を問う住民投票が実施され、オレゴン州を除く2州で、賛成派が勝利した。この2州では、これから合法化のための立法作業が行われる。昨年、ギャラップが行った全米レベルの世論調査では、賛成派が50%、反対派が46%、となっており、そもそも賛成派が優勢であった。

 オバマ大統領は、マリファナ合法化に対して、反対の立場を鮮明にしている。また、そもそも連邦法(The Federal Controlled Substance Act)で、マリファナは禁止薬物に指定されている。そこで、たとえコロラド州、ワシントン州がマリファナ合法化の立法を行っても、連邦政府が連邦裁判所に、州の立法に対する差し止め訴訟を行う、という観測もある。このような連邦政府(国権)と州政府(州権)の権限争いは、アメリカ憲法の歴史そのものだから、それ自体、とても面白いテーマだが、法律論の前に、先ずは「マリファナ合法化」の政治的な意味を考えてみよう。

 賛成派の論拠を整理すると、

(1)マリファナが、健康に害をもたらし、中毒性があるにせよ、タバコも健康に害をもたらし、中毒性がある。タバコを非合法化していないのに、マリファナを非合法とする理由がない、

(2)非合法であっても、現実にマリファナは大量に流通している。非合法であることで利益を得ているのは、メキシコの密売組織であるが、合法化すれば、犯罪組織の利益を取り上げて、これを、殆どそっくりそのまま、州の税収にすることが可能、

一方、反対派の論拠は、

(1)そもそも、明らかに健康に害をもたらすので非合法となっているものを、税収を理由に合法化するのは、社会のモラルに反する、

(2)マリファナの吸引がもたらす情緒の不安定化が原因の交通事故が多い。つまり、タバコよりも、はるかに「外部不経済」が大きい、

といったところであろうか。

 反対派の論拠(1)は、

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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『労働者の味方をやめた世界の左派政党』 (PHP新書、2019年)、『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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