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安倍総裁の「自画自賛」と2007年のコンプレックス

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 安倍自民党総裁の「自画自賛」発言がエスカレートしている。日銀をターゲットに大胆な金融緩和を主張。市場が円安・株高に反応すると、「私の政策のおかげだ」と誇り、「日銀との勝負はあった」と勝利宣言をしている。

 今回の円安については、日本の貿易収支が2011年に31年ぶりの赤字になり、その後も赤字基調が続いていることから、夏ごろには多くのエコノミストが秋以降の円安反転を予測していた。株高はその円安を反映したものだ。

 元々その流れがあった所に安倍発言が出たので、海外投機筋がはやして短期売買をしている。急ピッチに上昇した分はいずれ調整されるだろう。それを、白川日銀総裁の恩師からお褒めのファックスが来たことを根拠に、「オレが勝った」式の自慢を聞かされると、どこか子供っぽさを感じざるを得ない。

 安倍氏の発言をおさらいすると、(1)年2~3%のインフレ目標の達成を日銀に義務付け、デフレから脱却する、(2)そのためには輪転機を回して無制限にお札を刷る、(3)建設国債を日銀に全部引き受けさせて公共事業を拡大する、(4)日銀総裁・副総裁らを解任できるように日銀法を改正する、と言うもの。

 デフレの背景には、国民所得が下がり、少子高齢化で消費が低迷していることがある。経済成長で所得や消費を伸ばし、物価が上昇するという本来の道筋を取らずに、紙幣の増刷で物価上昇を達成しようとすれば、デフレ下の悪性インフレに陥る心配がある。

 (3)の日銀による国債の全部引受けは、一度始めると歯止めのない国債発行につながり、金利上昇を招く。安倍氏は「直接引受けとは言っていない」と弁明したが、市場から買う場合であっても政府が全部の引受けを明言すれば、同じ意味を持つ。

 また、公共事業の昨今の「費用対効果」は低下している。過去の公共事業が官僚の跋扈や省益優先を生み、国債残高を膨らましたことへの反省をまず聞きたいところだ。

 (4)の日銀法改正については、

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