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自民党は変わったのか~政権公約の経済政策を検証する~

中口威 内外情勢アナリスト

安倍総裁の金融緩和発言

 政界は12月16日の総選挙に向けて動き出した。現在までの世論調査では自民党の支持率が高く、安倍自民党総裁が新しい首相に就任する可能性も指摘されている。そこで本稿では安倍カラーが色濃く盛り込まれた自民党の政権公約を経済政策の観点から検証してみたい。

 衆議院解散以降、安倍総裁の大胆な金融緩和発言が相次いでおり、次期首相を意識した市場は円安に振れ、株価も上昇している。日銀の当座預金の金利をマイナスにすべきとか、建設国債を全額日銀に引き受けてもらうとか、発言は日々エスカレートし、逆に自民党幹部が鎮静化に動く場面もあった。

 FRBがQE3に踏み込み、ECBも南欧国債の無制限購入の意向を表明している現状、日銀も対抗してさらなる金融緩和を実施すべきとの主張も少なくない。政府債務が膨張し、財政政策で景気の浮揚策や金融機関の救済措置を講じられなくなった欧米諸国が継続的な金融緩和で時間稼ぎをしているわけだが、その結果米ドルやユーロが下落し、通貨引き下げ競争の様相をも呈している。

 これに対抗し非日常的と言われる、未曾有の91兆円というレベルの資産購入枠を設定した日銀に対し、さらなる金融緩和を求めるのが適切な選択なのか否か、此処へ来て賛否が分かれ始めた。

自民党の政権公約

 自民党は11月21日、副題を「日本を取り戻す」とした政権公約を公表した。そのなかにも、「日銀法の改正も視野に、政府・日銀の連携強化の仕組みを作り、大胆な金融緩和策を行う」旨が盛り込まれた。しかしながら、現状では、すでに設定された91兆円の買い入れ枠で市場に出回った大量の資金が、実体経済の資金需要が乏しいため、再び国債購入に使われて、11月28日現在10年国債の金利は0.7%台の前半、いわば国債バブルの状態にある。

 万一、日銀が建設国債の直接購入などに踏み込んだ場合には、国債価格が下落し、機関投資家に大きな損失が生じる可能性が指摘されている。安倍総裁は、建設国債の直接購入を否定し、市場で購入すると修正したが、これも進め方次第では、実態は直接購入と同じと見なされ、引き続き国債価格下落のリスクは残る。また過度の日銀の国債引き受けが、日銀ならびに円の信用失墜や悪性のインフレに繋がりかねない可能性についても十分留意すべきである。

 また国土強靭化基本法案を成立させ、減災対策を実施することも盛り込まれ、今後3年間は集中的に取り組むと言う。さらに、老朽化する道路・港湾・河川管理施設・下水道等を計画的に整備する。全国道路網の整備を促進、地域生活に不可欠な道路等は積極的に整備する由である。

 一方で、今後2~3年間は弾力的な経済財政運営を推進するとし、新政権発足後、速やかに「第1弾緊急経済対策」を断行、大型補正予算と2013年度予算を合わせ、切れ目ない経済対策を実行することも盛り込んでいる。

 以上を見る限り、なぜかいつか来た道、財政出動で公共事業を繰り返し、財政赤字だけが膨張し、経済対策という意味では一時凌ぎにしかならなかった90年代の自民党の経済政策を想起させ、 ・・・ログインして読む
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筆者

中口威

中口威(なかぐち・たけし) 内外情勢アナリスト

【退任】内外情勢アナリスト。1970年伊藤忠商事入社、鉄鋼原料部配属。資源開発大学校研修を経て、76~80年鉄鉱石事業会社出向(豪州駐在)。帰国後は資源開発業務を担当後、85~87年 日本商工会議所・東京商工会議所出向。帰社後は、海外企画統轄部などを経て、92年10月政治経済研究所に配属。以降経営情報室、産業調査室、グローバル・センサー編集長などを歴任。約20年間調査情報業務を担当し内外情勢分析業務に従事。2012年3月末伊藤忠商事を退社。

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